記事・レポート
ファッションから始まるコミュニケーション
丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方
更新日 : 2013年08月20日
(火)
第6章 心を満たす服、季節を感じる服
着ることでハッピーになる服
丸山敬太: 僕は、この世には2つの服があると考えています。1つは「用を満たす服」。たとえば、スポーツをするための服、ビジネスの場面で着る服など、何らかの目的や用途を満たす服です。僕が創りたいのはもう1つの「心を満たす服」です。日本的な表現をすれば、ハレの日に着ていただく服です。
人生には大切な服、使い捨てではない「心を満たす服」が必要だと、僕は考えています。身にまとうだけで特別な感覚になり、ハッピーな気持ちになる服。誰かの大切な日や大切な想い出に寄り添い、その人を勇気づけ、心を満たすような服。最初に服を創り始めた頃から、その思いはまったく変わっていません。
日本文化の良さを残していきたい
丸山敬太: もう1つ、僕が大切にしていることは、「着るもので季節感を表現する」こと。それは、脈々と受け継がれてきた、日本人独特のコミュニケーション方法でもあります。
日本には「着物」という美しい文化があります。着物は形がほとんど一緒であるため、個性を出すには、色や柄の合わせ方、ちょっとした着こなしなどで繊細な変化をつけます。そこには、何万通りというバリエーションを生み出せるおもしろさがあり、季節の変化を楽しむための工夫もたくさんあります。
もしも、戦争が起こらず、欧米の文化が緩やかに日本に取り込まれ、生活様式が変化していたら、着物はどのような変化を遂げたのか。また、どのような新しいものが生まれていたのだろうか。そんなことを、僕は想像することがあります。しかし実際は、戦後以降、日本の生活様式は急激に変化し、現代においては着物を着る機会も少なくなっています。だからこそ僕は、自分の創る服を通じて、「着るもので季節感を表現する」という日本の文化を残していきたいのです。
春を迎える季節なら、桜の刺しゅうを施したカーディガン、桜色のブラウスなどを創る。それを着ていただくことで、自身が楽しむことはもちろん、周囲の人々の目を楽しませることにもなる。それは、服を通した1つのおもてなしであり、素敵なコミュニケーションだと思うのです。そうしたことが日々の生活、ひいては人生を豊かにするのだと考えています。
ファッションから始まるコミュニケーション インデックス
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第1章 ファッションデザイナーという仕事
2013年08月12日 (月)
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第2章 はじめに「気分」を探る
2013年08月13日 (火)
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第3章 エゴイスティックな気持ちも込めて服を創る
2013年08月15日 (木)
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第4章 クリエーションに起きた変化
2013年08月16日 (金)
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第5章 丸山敬太はこの世に1人しかいない
2013年08月19日 (月)
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第6章 心を満たす服、季節を感じる服
2013年08月20日 (火)
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第7章 ファッションは人生を豊かにするもの
2013年08月22日 (木)
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第8章 コミュニケーションするファッションとは?
2013年08月23日 (金)
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