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活動レポート

日本は新しいテクノロジー・スタートアップに寛容だった!?

~強さの源泉は Stay Fearless, Stay Positive マインド~

活動レポート
更新日 : 2018年04月17日 (火)

 
講師:石倉洋子(一橋大学名誉教授)
ゲスト:Gajan Mohanarajah(Rapyuta Robotics CEO)
開催日:2018年3月19日(月)
文/清水 写真/御厨 慎一郎 

2018年のグローバル・アジェンダ・シリーズ第1回目は、全く新しいテクノロジーでロボットと私たちの生活を一変させる可能性を秘めるラピュタ・ロボティクスのGajan Mohanarajah CEOをゲストにお招きして開催しました。
世界初の技術を実用化させることの困難を乗り越えるために必要なこと、そして、起業環境という視点からみる日本の新たな一面とは?

Imagine a future where...


ゲストのGajanさんによるプレゼンテーション

最初に石倉教授からの冒頭のご挨拶で、テクノロジーの発展が今後の私たちの生活を形作ること、これまで一部の人だけが享受していたあらゆるものが、民主化されて分散化されていくこと、などが指摘されました。

また、最近滞在したサンフランシスコでのエピソードも披露。人々の話すスピードが速く、話についていくのが大変だったことや、現地の友人がPodcastの再生速度を2倍にして聴くことで短時間で多くの情報を得ることができると話していたことなどです。参加者はものすごいスピードで物事が進んでいるのだ、との感覚を得ながらセッションはスタートしました。

Gajanさんのプレゼンテーションでは、彼が描く未来(Future)、ラピュタ・ロボティクスが現在取り組んでいること(Present)、そしてこれまでの経験を通じて語れること(Past)の3つのポイントに添ってお話し下さいました。

皆さんは映画「マトリックス」をご存知でしょうか?その中でTrinityという登場人物がヘリコプターを操縦しなくてはならない場面が出てきます。しかし、Trinityは操縦方法を知りません。そこで仲間に電話して、自分の脳にヘリコプターの操縦方法のプログラムをダウンロードしてもらい、すぐにヘリコプターに乗り込むというシーンです。

一般の方に彼が目指す未来を分かりやすく伝えるときに、「マトリックス」を例えに説明することが多いというGajanさん。

ロボットがクラウドとつながり、分からないことがあればすぐにクラウドからダウンロードでき、容量が重たくなったらいつでもクラウドに戻すことができる---。
そうなれば、ロボットの自律性が高まり、あらゆることが実現できるのです。

このような自律性の上に、 Gajanさんが目指すのは、必要なときにロボットをオンデマンドで使うことができる、専門家がいなくてもどこにいても使うことができる、そして顧客は使った分だけのお金を払うという状態。

例えば、物流倉庫でこんなことができたらどうでしょう?
・週末に一気に自動化することができる
・ロボットを1日だけ、もしくは数時間だけレンタルして使うことができる
・倉庫のオペレーターが専門家を呼ばなくても1人で難なく作業プロセスを変更することができる
・ロボットが壊れても、別の違うメーカーの違うタイプのロボットがすぐに代替することができる

しかし、彼が描く未来を実現する技術は、現在まだ確立していません。
目指す未来を現実のものにするために、ラピュタ・ロボティクスは法人向けのプラットフォームを構築することに注力しているのが現状なのです。

恐れず、焦らず、ポジティブにしていれば道は開ける


モデレーターの石倉洋子教授
ラピュタ・ロボティクスは日本で設立してまだ4年ですが、SBIインベストメントやサイバーダインなどから大規模な出資を得て順風満帆に進んでいるように見えます。

しかし、これまでの経験を通じてGajanさんから語られたのは、全く新しいテクノロジーを実用化させようとする際に直面した困難の連続である、ということでした。

例えば、最初に著名な投資家に会うチャンスを得てビジネスプランをピッチしたときに言われた言葉。
「あなたたちに投資するよりも、私ならスリランカの土地を買いますよ。」
自分たちが信じている未来を理解してもらえず、これにはGajanさんも大きなショックを受けたといいます。

それでも焦らず、困難に直面したときも自分が抱える恐れる気持ちを客観視し、自分たちが目指していることをポジティブに信じる。そうして努力を継続していたら、自分たちのビジョンを理解し、可能性を信じてサポートをしてくれる人が必ずいる、とあくまでも前向きです。

また、14の国籍約50名の社員で構成されているグローバル企業としてのマネジメントで重要なこととして彼が挙げたのは、オープンであること、そして共感を持つこと、でした。オープンであるためには、あらゆるステップで透明性を保ち、誰をも包含する努力を続けなければならず、そのための労力をいとわないようにしなければならない、と主張しました。

石倉教授とのトークセッションでは、スリランカ出身のGajanさんがなぜ日本で起業しようとしたのか、との問いから始まりました。

ラピュタ・ロボティクスは場所にとらわれずにどこでもビジネスができる、と主張するGajanさんですが、日本で起業したのは次の3つの理由があると言いました。

1.日本は人口減少が続いており、ロボットの活躍が期待されている

2.コミュニケーションのインフラが整っている

3.日本の法人顧客は新しいテクノロジーに寛容である

特に3.について、彼はドローンのスタートアップとしてEUで起業した知人の例を挙げて説明しました。その知人がヨーロッパ企業との商談時にドローンのデモを実施した際、1回の失敗で商談が破断になったことがあったそうです。

Gajanさんによると、日本企業はその逆だといいます。新しいテクノロジーの実現には時間がかかることを理解し、長期的な視野に立って可能性に賭けてくれる、と話していたのが印象的でした。

日本はスタートアップに寛容な国!?


質疑応答では、外国人参加者からを含めて多くの質問が出ました。

1つは、Uberが日本では他国と同様の配車サービスを展開できずにいることを挙げつつ、日本でビジネスをするにあたって規制などの縛りはあるか、というものです。

Gajanさんは、日本ではオペレーターがドローンを飛ばすときに近くにいないといけない、という規制があったが、ラピュタ・ロボティクスが目指すドローンはオペレーターが100キロ以上離れたところにいてもドローンが自動走行するというものなので、当局と交渉して変えてもらった例を話しました。

行政も日本でイノベーションを起こして欲しいので、スムーズに規制を変えてくれたというのです。

先ほどの、日本企業が新しいテクノロジーに理解があり、長期的な視野で可能性に賭けてくれるという点に加え、日本はスタートアップに寛容な国だという印象的なエピソードです。

Gajanさんと同様に日本で起業し、ビジネスをしているという外国人の参加者からは、起業家にとって日本は資金を獲得するのが難しく、「リスクを取りたがらない」文化があり、起業環境が整っていないとされる中で、Gajanさんのエピソードは自分の認識とは違うというコメントがありました。
そして、「外国人の起業家として日本にどのような貢献ができるか?」という難しい質問が投げかけられました。

スリランカでロボティクスをやりたいと思って育ち、日本政府からの奨学金を得て日本に留学できたことでその道が開けたこと。他にも日本企業から得たサポートなどを考えると、自分は外国人として貢献するという視点よりも「日本に恩返しがしたい」という気持ちで事業を続けている、とGajanさんはコメントしました。

石倉教授は、テクノロジーというグローバルなものと、その広がりが各国の文化とどう折り合いをつけていくのかという点で、とても興味深い質問だ、と深く頷きます。

地域が持つ文化や価値観に関係なくテクノロジーが浸透していくのか、それとも、それぞれの価値観にフィットするように調整するのか。

しかし、これは答えがない問題で、私たちがもがきながら感じていくしかない、と石倉教授はセッションを締めくくりました。



該当講座

Building a Born-Global Firm

~世界を視野に外国人が日本で起業するということ~

Building a Born-Global Firm
Gajan Mohanarajah (Rapyuta Robotics 代表取締役CEO)
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)

創業時から国境や国籍にとらわれず、世界の最適地人材を採用し、研究開発や市場を開拓する「ボーン・グローバル企業」。今回は日本を拠点にしたボーン・グローバル企業の一つとして注目されるラピュータ・ロボティクスCEOのガジャン・モーハナラージャー氏をゲストにお迎えします。
ICTの進展に後押しされ、誰でも良いアイディアと技術があれば世界のどこにいても勝負できる時代。
それを体現するモーハナラージャー氏に、起業のエコシステムが整っていないと言われる日本で外国人が世界を視野に起業することとはどういうことなのか、お伺いします。


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