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活動レポート

100年後の「人間らしさ」って何?
~六本木アートカレッジ セミナー「これからのライフスタイルを考える」を振返る~

活動レポート文化教養キャリア・人
更新日 : 2017年03月14日 (火)

人類の生活と常識を根底から覆がえすと言われる「第四次産業革命」は時代の必然。
“今までの常識が常識ではなくなる”そんな時代が到来するとき、私たちはどのように生活しているのでしょうか?
そんな「?」からスタートした「これからのライフスタイルを考える」の連続セミナー。
2016年4月に始まった10回シリーズは、今月で終了しましたが、実際のセミナーではどのようなことが語られたのでしょうか?


文/kumada 写真/御厨 慎一郎


 竹中平蔵アカデミーヒルズ理事長は、「アートは、我々人間が生きるための根源的な問いを投げかけてくれる。第四次産業革命により、AIやロボットがますます力を増す今、本来の“人間らしさ”について考えるチャンスと捉えることもできます。今だからこそアートに触れることにより、このチャンスを活かして、“人とは何か、自分とは何か?”をしっかりと考えて欲しい。」と、このシリーズを通じてコメントされました。
 それでは、ご登壇いただいたスピーカーの方々の印象的な表現をピックアップしました。

「未来のヒントはアートにある?~アートと社会~」(2016年4月26日開催)

■南條史生氏(森美術館館長)



 100年前は「この作品は展示できない」とネガティブに捉えられた作品も、現在はポジティブな意味で展示されているケースがある。作品に何らかの意味づけをするのは、アートを「読む」側、すなわち我々一人ひとりであり、社会です。アートをヒントとして、何を感じ、何を考え、何をクリエイトするのか。すべては「読み方」(我々)にかかっているわけです。

「これから私たちは何を着るのか?」(2016年5月16日開催)

■軍地彩弓氏(編集者)



 何歳になっても全力でおしゃれを楽しみ、自由に楽しく生きることは、とても素敵なこと。それと同時に、個人にスポットが当たりやすい時代になったことで、これからのファッションは『自分をどうプレゼンテーションするのか?』という視点も重要になる。これまでどう生きてきたのか、これからどう生きていくのかなど、自らの精神や生き方を表現するセンスも問われるようになっていく。

「伝統を未来へどう伝えるか」(2016年6月10日開催)

■丸若裕俊氏(㈱丸若屋代表取締役)


 たしかにハードの美しさも重要ですが、人々が伝統工芸品を買う本当の理由は、無意識ながらもその内に秘められているソフトウェアを求めているからだと思います。それは作り手の思いや愛情、歴史や文化といったもの。優れた伝統工芸品には、長い時間をかけて育まれてきた様々な情報が入っている。だからこそ、時を超えて人を魅了するものになるのだと思います。

「身体の拡張」(2016年7月20日開催)

■安田登氏(能楽師)


 人間の身体には「弱い」という大きな欠点があります。しかし、弱い身体だからこそ、先人は火や道具など、それを補うための方法、身体性を最大限に活かす方法を一生懸命考え続け、私たちは今、その恩恵に与っているわけです。その「弱さ」から生み出された最大の産物が「心」です。だからこそ「弱さ」、フラジャイルな身体性というのは、これからも大事だと思うのです。

「情報過多時代の暮らし方」(2016年8月23日開催)

■飛鷹全法氏(高野山高祖院住職)


 情報化社会に生きる私たちは、気がつけばSNSのタイムラインを眺めてしまうように、情報のインプットが過剰に過ぎるのだと思います。そのような時代だからこそ、情報からも距離を置いてみること。情報を遮断するからこそ、逆に情報を取捨選択する感度が高まり、情報に振り回されなくなる。外からの情報を断つことで、自分の中にある内なる情報に気づき、自分にとって本当に必要なことが何であるかが、はっきり認識できるようになります。

「ジャパンウェア~日本型ベンチャースピリットの行方~」(2016年10月11日開催)

■大澤真幸(社会学者)



 日本の文化にはクリエイティビティの核のようなものがたくさんあり、私たちは明らかにそれを引き継いでいる。しかし、ベンチャー的な事を起こすには、道具やスキルだけでは何もできない。まずは人間として「非合理的」にならないといけない。効率や合理性を優先してばかりでは、ベンチャースピリットは生まれません。

※「講義録(オピニオン・記事)」は2017年4月中旬に公開予定

「人間にとってAIとは何か?」(2017年2月2日開催)

■羽生善治氏(将棋棋士)


 いまの時代って、ものすごくたくさんの情報やデータがあるので、未知の場面に出会う機会が少なくなっています。未知の場面に出会う機会を増やすことで、自分が経験していないものごとを経験したり、知らなかった場所や環境に身を置いたりすることが大切になるんじゃないかな。未知のものに出会ったときの適応力とか対応力が結構大切なことだと思っています。

シリーズを終えて。

 米国のフューチャーリスト、レイ・カーノルズ氏は「2045年にシンギャラリティ(未来研究において、人類により発明された科学技術の歴史から推測され得る未来モデルの適用限界点)に達する」と言われています。シンギャラリティの先に、どのような社会が待ちうけているのでしょうか。
 今回のセミナーシリーズでは「100年後にどのような社会を迎えるのか?」という問いに対する答えは出ていません。ただ、「私たちは、将来を見据えて今後どのように考え、行動すべきか?」を考えるヒントは多々あったと思います。
 是非、このチャンスを活かして、「人とは何か、自分とは何か?」をしっかりと考えてみませんか!


六本木アートカレッジ 2016 「これからのライフスタイルを考える」セミナーシリーズ

第1回「未来のヒントはアートにある?~アートと社会~」(2016年4月26日)
南條史生(森美術館館長)×竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長)

第2回「これから私たちは何を着るのか?」(2016年5月16日)
古市憲寿(社会学者)×軍地彩弓(編集者)

第3回「伝統を未来へどう伝えるか」(2016年6月10日)
丸若裕俊(㈱丸若屋代表取締役)×高橋俊宏(Discover Japan プロデューサー)

第4回「身体の拡張」(2016年7月20日)
安田登(能楽師)×為末大(元プロ陸上選手)

第5回「情報過多時代の暮らし方」(2016年8月23日)
石川善樹(予防医学研究者)×飛鷹全法(高野山高祖院住職)

第6回「マインドレスからマインドフルへ」(2016年9月14日)
高橋龍太郎(精神科医/現代アートコレクター)×宇野常寛(評論家)

第7回「ジャパンウェア~日本型ベンチャースピリットの行方~」(2016年10月11日)
松岡正剛(編集工学研究所所長)×大澤真幸(社会学者)

第8回「なぜ、人は宇宙をめざすのか? 」(2016年11月9日)
的川泰宣(JAXA名誉教授)×高柳雄一(多摩六都科学館館長)×樋口清司(前JAXA副理事長)×清水順一郎(「宇宙の人間学」研究会事務局/代表)

第9回「人間にとってAIとは何か?」(2017年2月2日)
羽生善治(将棋棋士)×石山洸(Recruit Institute of Technology推進室室長)

第10回「そもそも“人”とは何か?」(2017年3月14日)
丸幸弘(株式会社リバネス代表取締役CEO)×山田拓司(株式会社メタジェン取締役副社長CTO)、仲木竜(株式会社Rhelixa代表取締役社長)、高橋祥子(株式会社ジーンクエスト代表取締役)


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