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セミナーレポート:「オリンピックを契機に日本から芸術・文化を世界に発信する」

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更新日 : 2016年07月05日 (火)

アカデミーヒルズ スタッフの活動レポート 
文/清水 写真/アカデミーヒルズ
セミナー開催日:2016年6月22日

東京がロンドンオリンピックの成功から学べることとは?20年以上ロンドンに在住する作曲家の藤倉大氏と12年以上東京に在住する在日英国商業会議所専務理事のLori Henderson氏をお迎えして議論しました。藤倉氏はアーティストや生活者としての視点、Henderson氏はマーケティングとビジネスの視点から率直に語って下さり、日本の強みを見つめ直すきっかけとなりました。

Diversity(多様性)、Inclusive(包括)がキーワード


石倉洋子氏の司会で進行した鼎談

2012年のロンドンオリンピックは、成熟した大都市で開催されたものとして大きな成功を収めたことで高く評価されています。

その理由の一つとしてHenderson氏が挙げたのが、主催者側が一貫して「Diversity(多様性)、Inclusive(包括)」をロンドンオリンピックのメインテーマに据え、それを徹底したことでした。

「ロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会は、世代、性別、LGTB(性的少数者)、障害者、文化、全てにおいて多様性を追求し、このイベントを社会を変えるきっかけにしようと考えました。(中略)ロンドンが世界で最も開かれた都市であり、ロンドンの人々の多様性がオリンピックそのものにも反映されるように、と強くコミットしたのです。」

またHenderson氏は、オリンピック関連イベントの多くがロンドンやイングランドだけでなく、スコットランド、アイルランド、ウェールズ周辺でも行われ、これらの地域全てがオリンピック主催者として一丸となり、恩恵を受けられるように設計されたことにも言及しました。東京オリンピックでも、日本全国、全ての地域がオリンピック開催を「自分ごと」として捉えられるようにすることが必要だと主張しました。

多様性はロンドンオリンピック開催にあたり絶対に必要なテーマだったと藤倉氏も振り返ります。特に音楽の分野では、有名な曲だけでなく、一般には知られていない作品や斬新な音楽が演奏されるコンサートがオリンピック関連イベントとして大きく開催されたといいます。

こうした新しい音楽の試みがなされたことも、ロンドンの多様性を象徴するものとして藤倉氏の心に強く印象づけられました。

また、藤倉氏は生活者としてもロンドンの多様性を日常的に実感しています。ブルガリア人の奥様との間にお子さんがいらっしゃる藤倉氏は、お子さんが通う公立の学校に多様な人種の生徒がいて、ここでは「日本人とブルガリア人のハーフ」であることは特別なことではなく、「みんな違うことが普通」だと気付いたといいます。

「ロンドンそのものが多様性を体現しており、多様性なくしてロンドンは語れません。」と藤倉氏は強調しました。

ロンドンの開会式ではエリザベス女王がヘリから舞い降りて登場!さあ、東京はどうする?


お二人の率直な語り口に会場も和やかムード
ロンドンオリンピックは開会式でも世界中の人々を魅了することに成功しました。そこには、大会のテーマであるInclusiveが根底に流れていた、とゲストの二人は指摘します。

映画「007」のジェームズ・ボンド役の俳優と共にエリザベス女王がヘリコプターから舞い降りるという演出で世界をあっと言わせたパフォーマンスは、女王の設定だけでなく、世界中の誰もが知っているジェームズ・ボンドというキャラクターを使うことで人々を引き込みました。開会式で演奏された音楽も、ビートルズやローリング・ストーンズ、スパイス・ガールズのパフォーマンスなど、年齢を問わずに誰もが受け入れられる選曲になっていた、と両氏は評価します。

多様性というコンセプトからぶれずに、英国の強みを生かして世界中を巻き込む努力を惜しまなかったからこそ成功したロンドンオリンピック。しかし、ロンドンのやり方がすべてではない、とHenderson氏は断言します。「日本には日本のやり方があります。ロンドンの成功を真似るのではなく、日本独自のやり方を模索してほしいのです。」とエールを送りました。

質疑:開会式・閉会式に関して東京へのアドバイスは?


オリンピックに関する質問で盛り上がりました
質疑の時間では、オリンピックに関連する質問が相次ぎました。

その中でも印象的だったのが、「日本には国際的に著名な人物がそれほどおらず、世界的に見て知られているのはアニメキャラクターやポップカルチャーくらいしか思い浮かばない中で、開会式と閉会式を企画するにはどうしたらいいか?」というアドバイスを求める質問でした。

それに対してHenderson氏は、「世界のリーダーとして、技術やコンセプトを通じて日本がいかにイノベーティブであるかを開会式、閉会式で発信していって欲しい」と提案しました。
少子高齢化、世界第2位の経済大国からの転落、日本の国際競争力の低下など、日本を取り巻く環境は確かに厳しいかもしれません。それでもまだ、世界の人々にとって日本はグローバル・リーダーであり、それを自覚するべきなのだというHenderson氏の力強い言葉に勇気づけられた参加者も多いのではないでしょうか。

そのためにも、アイドルやアニメ、忍者など典型的な「日本文化」とされるものではなく、脱消費社会や持続可能な社会を象徴するもっと革新的なテーマを探すべきだとHenderson氏は主張しました。

藤倉氏は、指揮者の小澤征爾氏やバイオリニストの五嶋みどり氏などを挙げ、世界的に有名な日本人は他にもいると指摘しました。そして東京が安易な企画に甘んじることなく、世界の人々の心に残る開会式・閉会式にしてほしいと要望しました。

石倉氏は、世界に日本の文化とは何かを定義させるのではなく、日本自身が考えるべきことであり、そのためにも2020年の東京オリンピック開催は私たちが日本を見直す良いきっかけになる、とまとめました。

はたして、皆さんが考える日本の文化、そして日本の良さとは何でしょうか?

本セミナーについては、石倉氏の公式ブログに彼女の感想が書かれていますので、ぜひご覧ください。


該当講座

オリンピックを契機に日本から芸術・文化を世界に発信する

~ロンドンの成功から東京が学べることとは~

オリンピックを契機に日本から芸術・文化を世界に発信する
藤倉大 (作曲家 Composer)
Lori Henderson (在日英国商業会議所 専務理事 Executive Director of the British Chamber of Commerce in Japan )
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)

2020年の東京オリンピックで世界に日本の魅力を発信する好機に、日本の伝統芸術・現代芸術をどうアピールしたらよいのでしょうか?イギリスのクラシック界で知らない方はない新進気鋭の作曲家 藤倉大氏と、在日英国商業会議所において、マネジメント、コミュニケーション戦略を担うLori Henderson氏をお迎えし、ロンドンオリンピックの成功例を踏まえて議論します。


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