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活動レポート

意外な素顔に驚きの連続!
~六本木アートカレッジ「素顔のアラブを知る」3回のセミナーを終えて~

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アカデミーヒルズ スタッフの活動レポート
文/Kumada 写真/アカデミーヒルズスタッフ

シリーズ「素顔のアラブを知る」セミナーとは・・・


モデレーターの長谷川由紀氏

 2010年末のチュニジアのジャスミン革命から始まった民主化革命「アラブの春」により、「アラブ」に注目が集まりました。毎日のように新聞やテレビのニュースで動向を知ることはできました。
 しかし、そもそも「アラブ」ってどんな国、文化、人々はどのような暮らしをしているの? アラブの日常生活、素顔を知る機会はなかなかありません。また、「アラブ」とひとくくりにしても、国や地域によって多種多様です。

そこで、シリーズ「素顔のアラブを知る」は、「アラブ・エクスプレス展」(森美術館2012/6/16~10/28)開催を機会に、テレビや新聞ではなかなか知ることができないアラブ世界の日常にフォーカスして、多面的にアラブ世界を紹介するために、3回のセミナーを開催しました。

 そして、この展覧会を共催する読売新聞で国際部記者を務める長谷川由紀氏に、シリーズを通じてモデレーターを務めていただきます。長谷川氏は今年の2月まで読売新聞カイロ支局に勤務され、アラブ世界で生活された経験をお持ちです。ゲストとの対談を通じて、「素顔のアラブ」に迫っていただきました。


第1回のテーマは、「地理・歴史からアラブを知る」。


第1回ゲスト講師の池田明史氏

アラブ世界の地図を見ながらの講演
 池田明史先生(東洋英和女学院大学 副学長)をゲスト講師にお招きして、アラブ地域の紛争を中心にお話いただきました。

 「アラブの春」と俗称される一連の政治変動は、突発的・一過的な現象ではなく、独裁支配の下に一見して平静を保っていましたが、長期間蓄積された不満が表面に出できた現象です。そして“何故この時期に? 何故この地域から起こったか?”が重要だというお話から池田先生の講演はスタートしました。
 アラブ世界全体では豊富に石油がありますが、大きくは産油国と非産油国に二分されます。1970年代は、「あるところ」から「ないところ」へ資本と労働力が地域内で循環して、非産油国も石油の恩恵を蒙っていました。ただ、1980年代後半から石油価格が下落し、産油国と非産油国の軋轢が生まれ始めました。そして2010年、ネット社会となり、アラブ世界はアラビア語という共通言語であったため、国・地域を越えて個人的にネットワークが広がり、結果的に「アラブの春」が起きたとのこと。
 「アラブの春」はソーシャルメディアが引き起こしたとよく言われますが、その裏には「アラビア語」という共通言語があったことも重要なキーファクターでした。

 皆さん、「アラビア語を話す人がアラブ人で、アラブ人が住む地域がアラブ世界」という定義をご存知でしたか?
 そもそもアラビア語圏は、イスラム教の聖典であるコーラン(神聖なるアラビア語でしか記すことを許されていません)によって広がりましたが、現在は「東地中海(マシュリク)」、「北アフリカ(マグレブ)」、「湾岸」の3つ地域に分かれ、多様な文化が存在しています。

第2回のテーマは、「イスラム教」。


第2回ゲスト講師の島田裕巳氏

島田氏と長谷川氏の対談
 イスラム教とは、唯一絶対の神(アッラー)を信仰し、神が最後の預言者であるムハンマドを通じて人々に下したとされるコーランの教えに従う一神教の宗教です。
 アラブ世界とイスラム教は密接につながっていますが、イコールではありません。エジプトやシリアは人口の9割はイスラム教ですが、1割はキリスト教。トルコはほぼイスラム教ですが、言語がアラビア語ではなくトルコ語なのでアラブ世界には属していません。また、世界で一番イスラム教徒の多い国はインドネシアになります。
 私たちは、「中東=アラブ=イスラム教」、「イスラム教は戒律が厳しい」というイメージを描きやすいのですが実態は・・・

 第2回は、宗教学者の島田裕巳先生に「イスラム教」をテーマにお話いただきました。
 「無宗教の日本人は、イスラム教をどう理解すればいいか?」が、島田先生の最初のテーマでした。
日本人にとって宗教とは「心」、「内面」のこととして捉えています。しかしイスラム教徒にとってのイスラム教は、生まれたときから選択の余地はなく生活習慣、生活そのものだそうです。
「断食月は日本的な感覚で言えば、盆と正月。メッカ巡礼は正月の初詣。」という島田先生の表現は、目から鱗でした。
 イスラム教の法体制であるシャリーアは、コーランとハディースから構成されています。コーランは神の言葉であり、宗教が生まれる時の切迫感が見られます。一方、ハディースは預言者ムハンマドの言葉であり、いかに神に祈る時に清めるかがテーマ。食物規定や偶像崇拝の禁止など、かなり徹底されていますが、地域よって大きな違いがあるようです。
 以上のように、日本人が考える宗教(こころを重視)に対して、イスラム教は内面的な信仰とは必ずしも言えないと、島田先生は締めくくられました。

 ところで、ラマダンは何時から何時までと毎日時間が決まっているとのこと。その時間が守ることが重要だそうです。ラマダンの時間が終わると、宴会が始まるそうです。これも目から鱗のお話でした。

第3回は、アラブ世界のライフスタイルを紹介。


第3回ゲスト講師の師岡カリーマ・エルサムニーさん

レバノンの料理「メッゼ」
 第3回のゲスト講師は、エジプト人のお父さんと日本人のお母さんをお持ちの師岡カリーマ・エルサムニーさんです。

 まず、各国のお料理の紹介から始まりました。(スクリーンに映ったのは美味しそうなお料理ばかり!)
・レバノンは、「美人とグルメの国」と言われており、“メッゼ”と呼ばれる色とりどりの前菜。
・モロッコは、世界的にも有名になった“クスクス”と“タジーン”。
・エジプトは、“モロヘイヤ”、“鳩”、そしてキャベツやブドウの葉で米を巻いた“マハシ”。
・湾岸地域の国々の定番は、元遊牧民らしいコメ料理“カブサ”。
 カリーマさんは、「お料理ひとつ取っても多種多様。気候も多種多様。砂漠もあれば、豊かな田園風景、冬には雪が降るエリアもある。アラブ世界と言っても多種多様なので、それを前提にお話を聞いてください。」とのこと。(ご用意いただいたスライドの表紙には「素顔のアラブ(のほんの一面)」と記載されていました!)

 まずは、標準的な1日の過ごし方の紹介。暑い気候のため「朝が早くて夜が長い」ライフスタイル。朝6時には既に活動を開始している人が多く、職場も早くに始まり14時か15時頃には仕事を切り上げるそうです。家族にとっては昼食が一番大切な時間で、全員で食べるとのこと。午後の暑い時間はお昼寝をして、涼しくなる夜には、タクシーのドライバー等の副業に就く人、ショッピングをする人など、活動が再開されるようです。また基本的には家族単位で活動するので、世代間の断絶もなく、子供も早くに社会性を身に付けるとのこと。
 カリーマさんのお話は、1日の過ごし方から、一夫多妻制、女性のベールに対する考え方やファッション、戒律に至るまで、アラブの日常そして、人々の価値感について、とても興味深いことばかりでした。

 ところで、アラブの人々にとって匿名性の高いtwitterより、実名が基本のfacebookが普及しているそうです。ちなみに、エジプトのfacebookの人口普及率は約13%(twitterは約0.26%)、チュニジアのfacebookは約28%(twitterは約0.1%)だそうです。


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