記事・レポート
折れない心をつくる
メガストレス時代のメンタルタフネス術:渡部卓
〜ケロッグ経営大学院 モーニング・セッションより
BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年02月09日
(月)
第7章 事実の受け止め方・捉え方を変えるABC理論
合理的な認知、非合理的な認知
渡部卓: 自分のメンタルを、ネガティブな状態からポジティブな状態に切り替えていくためにはどうすればいいのか? そのポイントをご紹介します。
まずは、ストレスと上手に付き合うためのABC理論です。A(Activating Event)とは、ストレスの原因となる出来事です。B(Belief)は、信念や価値観、思い込み、先入観などで形づくられる、自分なりの受け止め方・捉え方(認知)です。C(Consequence)は結果・影響、つまり外面に表れる感情的・行動的な反応です。
私たちは普段、ある出来事(A)を受けた結果として、感情や行動(C)が生まれていると考えています。しかし、両者の間には、自分なりの受け止め方・捉え方(B)というフィルターがあり、そこを通過することで感情や行動はさまざまに変化しています。ストレスを感じるとき、多くの人はAだけに注目しがちですが、すでに起こってしまった事実は変えることも消すこともできません。一方で、自分なりの受け止め方・捉え方はいかようにも変えることができ、それにより結果も変わってくるのです。
たとえば、会社からリストラを通告されたとします。その瞬間は大きなショックを受けると思いますが、「定年まで勤めたかったが仕方がない。これを機に、昔からの夢だった○○にチャレンジしよう」などと前向きに考えることを、Rational Belief(合理的な認知)と言います。「理想通りになってほしいが、いつもそうなるわけではない」と、物事を柔軟に捉える。長い目で見れば、うつや不安の穴にはまり込むことを防いでくれます。
一方、「家のローンも子どもの学費もあり、絶対に定年まで辞めるわけにはいかない」と考えてしまう。こちらをIrrational Belief(非合理的な認知)と言います。「こうあるべき」「絶対に○○でなければ」という願望・思い込みが強すぎてしまうと、理想と現実の狭間で悩むようになります。うつや不安は、この非合理的な認知から生まれます。
自分なりの受け止め方・捉え方は、国民性、文化、宗教、育った環境などが影響するため、人それぞれクセがあります。しかし、日頃から前向きな思考を意識し、習慣づけていけば、必ず変えることができます。
日記で自分のストレスを見つめ直す
渡部卓: 自分の受け止め方・捉え方の傾向を知る方法があります。それは日記を書くこと。非常に単純ですが、日記を通じてうつや不安が改善することは、国内外の研究で実証されています。
日記には、その日に起こった良いこと、悪いこと、すべて書き出します。また、その出来事をどう解釈し、どのような感情をもったのかも書き出します。喜怒哀楽の感情は、10点満点で点数化してもいいでしょう。数日後、他人になったつもりで日記を読み返してみてください。時間をおくと、冷静に出来事を捉えられるようになり、感情の振れ幅も少なくなっているはずです。日記を定期的に読み返していると、次第に自分なりの受け止め方・捉え方の傾向がわかるようになります。
ストレスを受けたときに陥りがちな10大思考パターンがあります。こうした思考パターンに注意しながら、日記を読み返してみてください。
10大思考パターン
(1) 全部か無か。白黒をつけたがる。完全主義・白黒主義。
(2) すべてを悪い方向から一般化して捉える。悪いことは針小棒大に捉える。
(3) 良い事実ではなく、悪い事実を選択的に注目する。
(4) 未来に希望がなく、良いことも無視、マイナス思考。
(5) すぐに結論づける。悪い事実への恣意的推論。結論主義。
(6) 「○○であるべき」「○○でなければ」。頑固一徹な思考。MUSTが口ぐせ。
(7) ラベル(レッテル)、プライドにこだわる。
(8) 視野が狭くなる。ルール・規範にこだわる。
(9) 必要以上に他人(同僚・上司・会社・家族など)を責める。
(10)「悪いのはすべて自分のせいだ」と考える。自責主義。
メンタルタフネスを高めるためには、まずは自分のストレスの構造をよく知ることが大切です。ストレスの原因(ストレッサー)は何なのか。ストレスを受けた際、どのように解釈し、どのような影響が出ているのか。皆さんも、ABC理論や日記を通じて、ご自身のストレスの構造を見直してみてください。
折れない心をつくる
インデックス
-
第1章 日本で初めて「ストレス」を語ったのは誰?
2015年01月21日 (水)
-
第2章 ストレスを取り巻く世界の現状
2015年01月26日 (月)
-
第3章 折れやすい心 3つの傾向 (1)
2015年01月29日 (木)
-
第4章 折れやすい心 3つの傾向 (2)
2015年02月02日 (月)
-
第5章 ストレスが起こるメカニズム
2015年02月04日 (水)
-
第6章 ストレスの状態を知るためのチェックリスト
2015年02月06日 (金)
-
第7章 事実の受け止め方・捉え方を変えるABC理論
2015年02月09日 (月)
-
第8章 コミュニケーションに役立つ傾聴
2015年02月12日 (木)
-
第9章 これからのメンタルタフネス経営
2015年02月16日 (月)
-
第10章 部下には弱さを見せても良い?
2015年02月18日 (水)
注目の記事
-
03月26日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一による、六本木ヒルズライブラリーのための選書書棚「動的書房」。2024年3月に新たに21冊が並びまし....
-
03月26日 (火) 更新
本には、人生を変え、時代を創るパワーがある!
2023年4月から2024年2月まで全6回で開催したシリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」。モデレーターの干場弓子さんと何度も企画会....
シリーズ編集者の視点〜時代を共に創る〜 <編集後記>
-
03月26日 (火) 更新
【重要】「アカデミーヒルズ」閉館のお知らせ
「アカデミーヒルズ」は、2024年6月30日をもって閉館させていただくこととなりました。これまでのご利用ありがとうございました。閉館までの間....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 04月09日 (火) 12:00~12:45 / 04月09日 (火) 19:00~19:45
ゆる~くつながろう!メンバー雑談
テーマなし!年齢制限なし!ライブラリーメンバーなら誰でも参加できる雑談イベントです。肩の力を抜いて楽しく、そしてリラックスした45分を過ごし....
-
開催日 : 04月19日 (金) 19:00~20:30
地図・絵画・日記が語る
江戸時代は厳格な身分制社会の一方で、身分や職業を超えた文化交流の場が形成され、技術と文化の発展を促しました。その中で「浮世絵」は情報メディア....
江戸の「街づくり」「モノづくり」の遺伝子
-
開催日 : 05月02日 (木) 見学ツアー11:00〜12:00/オルガン・プレコンサート13:40~/コンサート14:00〜16:00頃
【メンバー対象イベント】日本フィル&サントリーホール
平日2時のクラシックコンサート「にじクラ~トークと笑顔と、音楽と」のリハーサルを体験しませんか?俳優・高橋克典さんがナビゲーターとなり、上質....
「にじクラ」リハーサル見学・ロビーツアー&昼公演鑑賞