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時代を撮り続ける写真家・篠山紀信の表現を探る

写真力とは何か?

キャリア・人文化
更新日 : 2013年01月31日 (木)

第5章 紀信直伝! いい写真の撮り方

写真:篠山紀信(写真家)
 
ハッと感じたら、グッと寄って、バシバシ撮る

生駒芳子: あえて聞いてみたいと思います。いい写真はどうしたら撮れるんですか?

篠山紀信: それを知ってりゃあ、僕も苦労しませんよ(笑)。でも昔、ミノルタのコマーシャルに僕が出ていたときね、カメラを持って「イイ写真を撮るには、ハッと感じたら、グッと寄って、バシバシ撮りなさい」ってやっていたんです。

生駒芳子: 確かに、言われていましたね。

篠山紀信: 「ハッと感じたら、グッと寄って、バシバシ撮る」って言ったのは、自分の目で見たときより、写真は余分なものが写ってしまうから。一歩前へ出て近寄ると、肉眼で見た感じに近いです。

生駒芳子: 集中して見ていますからね。

篠山紀信: でもね、ろくでもないものに対してハッと感じてしまったら、全然いいモノが撮れないじゃないですか。コマーシャルでは、ハッと感じるにはどうしたらいいのかというところまでは言及していません。

今日は特別に教えます。いいモノを見たり、おいしい物を食べたり、いい女と付き合ったり、とにかくいいモノに触れること。そうして、いい時間を過ごす。それが自分を変えていきます。そうすると、いろんなものを見たときの感じ方が違ってきます。そのハッと感じたときに、グッと寄ってパチパチ撮るのです。これ、秘伝ですよ(笑)。

松井冬子: 今のお話を聞いて、撮ることを本当に楽しんでらっしゃるのだと思いました。

生駒芳子: ハッと感じる感度を上げるというのは、いいお話ですね。アートや映画、音楽もそうですが、いいものをシャワーのように浴びせかけられると、自分が上がります。最近、日中関係とか日韓関係とかデリケートになっていますが、私は文化の部分でつながっていれば違うと思うのです。日本で韓流が流行っていれば、韓国にだって日本のアーティストが好きな方がいる。そういうものが心の結びつきになると思っています。

松井冬子: いいものは、国境なしですものね。

生駒芳子: カルチャーには、既成概念を超えた次元で人々を結びつける力がありますから。

調子が出ないとき、どうするか?

生駒芳子: 松井さんは「いい絵をかけたー!」って思う瞬間、ありますか?

松井冬子: うまくいくときは最初から最後まで決まりがいいです。一方で、うまくいかないときは、最初から調子が悪いなって思うところから入っていますね。

生駒芳子: うまくいかないときは、どうなさるんですか?

松井冬子: 最後は力技ですね。自分を鼓舞しますし、気合いでもっていきます。

生駒芳子: 篠山先生の場合はいかがでしょう?

篠山紀信: うまくいかないときは、やめてしまいます。そうも言っていられないときは、それこそ力技でどうにかするけど、時間がかかる。そうすると「今日は先生、こんなに時間をかけて……。さてはノッていますね?」と言われます。しかし、全然ノってないんだよ、それは(笑)! 早く終わったときこそ、うまくいっています。

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