六本木ヒルズライブラリー

ライブラリアンの書評    2016年7月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?

いい写真を撮りたい!と思いませんか?

『「いい写真」はどうすれば撮れるのか?~プロが機材やテクニック以前に考えること』
 中西 祐介【著】


本書は難しいカメラの知識以前の、もっと「撮りたい!」という気持ちに寄りそう一冊。「そうそう、知りたかったのはこういうこと!」と、ふっと余計な力が抜けて、写真を撮ることがより自由になります。

スマートフォンやデジカメが日常的な現代は、写真を撮ることが身近になっています。テクニックを知るためのノウハウ本は数多く出版され、Webで検索すれば専門的テクニックなどの情報はすぐに手に入ります。
が、そういった専門的なこと・テクニック以前の「写真を撮る行為」自体をしっかりと教えてくれる本は、あまりありませんでした。

「いい写真」とはどういうものか? ということを、きちんと言語化して考えてみよう、と著者は言います。たとえば「かっこいい」写真とはどういうもの? ということを、具体的な言葉に置きかえて考えていくのです。


一枚の写真を一概に「いい写真」「わるい写真」と判断するのは難しく、「その写真の何がいいのか/何がわるいのか」を自分に問い続けることが大切です。バッターが素振りをくりかえして打撃の基礎を磨くように、自分の中に写真を判断する軸を作っていくことが、いい写真に近づくための方法になるはずです。

「写真を撮る」という行為に真摯に向き合い、言語化することを繰り返してきた著者だからこそ発される言葉は、まるで文学にも通じるかのように読むことができます。そして掲載された著者による写真は、本来言葉を発しないはずなのに、実に雄弁に語ります。

日々写真と向き合い、言語化し、積み重ねていくことで、確実に「いい写真」に近づくことができる。そんな「写真=世界をみるまなざし」が、より広くより深くなる一冊。おすすめです。

(ライブラリアン:結縄 久俊)


「いい写真」はどうすれば撮れるのか?—プロが機材やテクニック以前に考えること

中西祐介
技術評論社