記事・レポート
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~
ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏 来日記念セミナー
更新日 : 2009年11月17日
(火)
第5章 ソーシャル・ビジネスもビジネス。持続可能でなければならない
米倉誠一郎: 「ソーシャル・ビジネスをデザインするだけでもいい」というのは、とても勇気づけられます。
ちょっと伺いたいのは、例えばグラミン・ダノンであれば、「どれだけの子どもが栄養を摂れるようになるか」ということを目標にしながらも、やはり利益を上げなければいけないわけですよね?
ムハマド・ユヌス: 持続可能でなければビジネスではないわけで、だから「ソーシャル・ビジネス」と呼ぶわけです。ソーシャル・ビジネスというのは「利益は上げるけれど、配当はしない」という考え方です。つまり規律は維持しなければいけないけれど、目的が違うのです。コストを低く抑え、より多くの人の手に入るように手ごろな価格にすることで、目標を達成しなければいけないのです。
米倉誠一郎: ちょっと意地悪な質問をしますが、20%の貸付金利というのは高いのではないですか?
ムハマド・ユヌス: それは相対的なもので、バングラデシュの経済の脈略の中で判断しなければなりません。バングラデシュで利益を上げている商業銀行の金利は年率で16.25%ぐらいです。グラミン銀行の20%というのは単利で、複利ではありません。商業銀行の16.25%というのは四半期ごとの複利ですから、最終的な金利は高くなるわけです。
私どもの融資は、預金を資金源としているので自給していかなければなりませんが、預金の最高金利は12%、最低金利が8.5%で、平均すると10%ぐらいです。グラミン銀行には4つの金利があります。住宅ローンの金利は8%、教育ローンは学んでいる間は金利ゼロで、教育が終わったら単利で5%になります。4番目の金利は、10万人以上の物乞いがプログラムに参加していて、彼らへの金利はゼロです。
つまり4つの融資のうち3つの金利は、預金金利より低いので損をしていて、20%の金利で埋め合わせをしている、という構造なのです。
米倉誠一郎: 日本の企業や日本の人たちが、どういう形でグラミンに協力できるとお考えですか?
ムハマド・ユヌス: いろいろなことにかかわっていただけると思います。例えば1つの分野を取り上げるとするなら、特にITの技術です。ウェブサイトの利用におけるいろいろなファシリティをつくってもらって、例えば貧しい人々が籠をつくり、それを自分たちの家に居ながらインターネットを通じて世界中に売り、インターネット上で支払ってもらえるようなことをしてもいいと思うのです。
携帯電話でもいろいろなことができるはずです。銀行取引、例えば銀行と結んで医療サービスを提供することなどができると思います。しかし、商業上、実現可能なものにしなければなりませんし、暮らしに使えるものにしなければなりません。そしてコストを回収することも必要です。そういうことをいろいろ考えてもらえるのではないでしょうか。
米倉誠一郎: ところでバングラデシュに、インターネットや携帯電話のインフラはあるんですか?
ムハマド・ユヌス: ITという意味では、過去10年ほどで世の中は大いに変わりました。私どもは1997年、グラミンフォンという会社をつくりました。当時、国全体で固定回線電話が50万しかなかったのですが、村に携帯電話が普及するように、グラミンの貧しい女性たちが携帯電話を買うローンを始めました。携帯電話を他の人に貸すことをビジネスにする村のテレフォンレディは、爆発的なビジネスになり、今、40万人のテレフォンレディがいます。
2009年までに、携帯電話は当たり前のものになりました。国内の6社のうち、グラミンフォン社の市場シェアは53%で、最大の携帯電話会社です。バングラデシュの人口は約1億5,000万人ですが、4,500万の加入者がインターネットにもアクセスできる携帯電話を持っています。インターネットと電話は同義語になりました。バングラデシュでは、どこに行っても携帯電話の電波が入ります。普及率は今もまだ伸びています。
ちょっと伺いたいのは、例えばグラミン・ダノンであれば、「どれだけの子どもが栄養を摂れるようになるか」ということを目標にしながらも、やはり利益を上げなければいけないわけですよね?
ムハマド・ユヌス: 持続可能でなければビジネスではないわけで、だから「ソーシャル・ビジネス」と呼ぶわけです。ソーシャル・ビジネスというのは「利益は上げるけれど、配当はしない」という考え方です。つまり規律は維持しなければいけないけれど、目的が違うのです。コストを低く抑え、より多くの人の手に入るように手ごろな価格にすることで、目標を達成しなければいけないのです。
米倉誠一郎: ちょっと意地悪な質問をしますが、20%の貸付金利というのは高いのではないですか?
ムハマド・ユヌス: それは相対的なもので、バングラデシュの経済の脈略の中で判断しなければなりません。バングラデシュで利益を上げている商業銀行の金利は年率で16.25%ぐらいです。グラミン銀行の20%というのは単利で、複利ではありません。商業銀行の16.25%というのは四半期ごとの複利ですから、最終的な金利は高くなるわけです。
私どもの融資は、預金を資金源としているので自給していかなければなりませんが、預金の最高金利は12%、最低金利が8.5%で、平均すると10%ぐらいです。グラミン銀行には4つの金利があります。住宅ローンの金利は8%、教育ローンは学んでいる間は金利ゼロで、教育が終わったら単利で5%になります。4番目の金利は、10万人以上の物乞いがプログラムに参加していて、彼らへの金利はゼロです。
つまり4つの融資のうち3つの金利は、預金金利より低いので損をしていて、20%の金利で埋め合わせをしている、という構造なのです。
米倉誠一郎: 日本の企業や日本の人たちが、どういう形でグラミンに協力できるとお考えですか?
ムハマド・ユヌス: いろいろなことにかかわっていただけると思います。例えば1つの分野を取り上げるとするなら、特にITの技術です。ウェブサイトの利用におけるいろいろなファシリティをつくってもらって、例えば貧しい人々が籠をつくり、それを自分たちの家に居ながらインターネットを通じて世界中に売り、インターネット上で支払ってもらえるようなことをしてもいいと思うのです。
携帯電話でもいろいろなことができるはずです。銀行取引、例えば銀行と結んで医療サービスを提供することなどができると思います。しかし、商業上、実現可能なものにしなければなりませんし、暮らしに使えるものにしなければなりません。そしてコストを回収することも必要です。そういうことをいろいろ考えてもらえるのではないでしょうか。
米倉誠一郎: ところでバングラデシュに、インターネットや携帯電話のインフラはあるんですか?
ムハマド・ユヌス: ITという意味では、過去10年ほどで世の中は大いに変わりました。私どもは1997年、グラミンフォンという会社をつくりました。当時、国全体で固定回線電話が50万しかなかったのですが、村に携帯電話が普及するように、グラミンの貧しい女性たちが携帯電話を買うローンを始めました。携帯電話を他の人に貸すことをビジネスにする村のテレフォンレディは、爆発的なビジネスになり、今、40万人のテレフォンレディがいます。
2009年までに、携帯電話は当たり前のものになりました。国内の6社のうち、グラミンフォン社の市場シェアは53%で、最大の携帯電話会社です。バングラデシュの人口は約1億5,000万人ですが、4,500万の加入者がインターネットにもアクセスできる携帯電話を持っています。インターネットと電話は同義語になりました。バングラデシュでは、どこに行っても携帯電話の電波が入ります。普及率は今もまだ伸びています。
関連書籍
貧困のない世界を創る—ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義
ユヌス,ムハマド, 猪熊 弘子【訳】早川書房
ムハマド・ユヌス自伝—貧困なき世界をめざす銀行家
ユヌス,ムハマド, ジョリ,アラン, 猪熊 弘子【訳】早川書房
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~ インデックス
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第1章 27ドルで借金苦という異状。グラミン銀行の誕生背景
2009年10月07日 (水)
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第2章 グラミン銀行がニューヨークに進出した理由
2009年10月16日 (金)
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第3章 なぜ100年に1度の危機に陥ったのか。ビジネスの概念を問い直せ
2009年10月26日 (月)
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第4章 ソーシャル・ビジネスで「技術と問題」をつなげば、社会問題は解決できる
2009年11月06日 (金)
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第5章 ソーシャル・ビジネスもビジネス。持続可能でなければならない
2009年11月17日 (火)
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第6章 お金を稼ぐ目的は何ですか?
2009年11月27日 (金)
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第7章 ソーシャル・ビジネスとチャリティの違い
2009年12月08日 (火)
該当講座
ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏来日記念セミナー
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~
ムハマド・ユヌス(グラミン銀行総裁)
貧困層に無担保で少額の融資を行う「マイクロクレジット」という手法によって、貧しい人々の経済的自立を支援するグラミン銀行を設立し、その活動によってノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏。彼が新たに提唱する「ソーシャル・ビジネス」の構想と実践についてお話いただきます。
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