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<チーム・ポリシーウォッチ>2018年の政治・経済・政策を斬る

活動レポート政治・経済・国際その他
更新日 : 2018年04月20日 (金)

~憲法改正に邁進となるのか?改革は本当に進むのか?~ (前編)

スタッフの活動レポート

講座タイトル:チーム・ポリシーウォッチ「2018年の政治・経済・政策を斬る」
~憲法改正に邁進となるのか?改革は本当に進むのか?~
開催日:2018年1月31日(水)19:00~21:00 

<司会>
・岸博幸 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授) 
<登壇者>
・竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)
・平将明(元・内閣府副大臣/元・経済産業大臣政務官)
・冨山和彦 (株式会社経営共創基盤代表取締役社長)
・野村修也 (中央大学法科大学院教授/森・濱田松本法律事務所客員弁護士)
・松原聡 (東洋大学副学長・教授)
・原英史 (株式会社政策工房 代表取締役社長)

<ビデオメッセージ>
・Robert Alan Feldman (モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 チーフ・エコノミスト)


岸 博幸氏
毎年恒例となるチーム・ポリシーウォッチのシンポジウムを開催しました。
チーム・ポリシーウォッチは、民間に政策の専門家が少なく、メディアの政策に関する報道の多くも、本質的な点からはずれてしまっている場合が多いのではないかという日本の政策を巡る環境への問題意識の下、政策に関する第一人者が自発的に集った組織で、政府の経済政策に関する意見交換や問題意識の発信等の活動を行っています。
 
冒頭に岸博幸氏より、日本における構造改革の第一人者であり、チーム・ポリシーウォッチの創設者でもある故加藤寛先生の意思をついでいることが語られました。また、政府の政策の監視を行っているNPO法人万年野党(田原総一郎理事長)の全面協力も得て、本シンポジウムでは、2018年は世界経済や日本経済がどう推移するか、その中で安倍政権の経済運営はどうなるのか、改革は本当に進むのか、について議論を深め、最後には参加者にも議論の場を設けることが示されました。




シンポジウムは、まず今回参加できなかったモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 チーフ・エコノミスト Robert Alan Feldman 氏のビデオメッセージからスタートしました。

■世界経済の見通し
米国の景気は減税法案の効果もあり、18年の経済は刺激される見通しです。中長期成長には、インフラ整備は必要ですが、現在はまだやり方がまとまっていません。また、米国の株価はこれまで通りには上がっていかない可能性もあります。これまで中国は、習近平政権が安定していることもあり、18年の経済面は良好で6%成長は維持しています。しかし、ニューチャイナとオールドチャイナの矛盾が残っているため、成長ペースはこれ以上加速しないでしょう。

■日本経済の見通し
2018年に入って日本の在庫循環は悪くなく、生産はプラスになっており、景気は悪くありません。このままデフレ脱却が進むのではないでしょうか。それを受けて日銀のゼロ金利政策に見直しもあるかもしれません。サプライズで金利を上げれば円高になりますが、タイミングや対策の整合性が問われることになるでしょう。円高によっても企業努力で相殺して企業収益は若干が上がるかもしれませんが、継続的に上がるとは言い切れません。

■日本の働き方改革
今の働き方改革は失敗となる可能性があります。労働時間が減って時給が上がらないのであれば、緊縮政策になる。頑張って働きたい若い人達が、スキル獲得の機会を失い日本の原動力が損なわれ日本経済にも影響を及ぼしかねません。


竹中 平蔵氏
Feldman氏のビデオメッセージを受けて竹中氏からは、5日前に閉幕した世界経済フォーラム(ダボス会議)のトピックスを共有いただきました。

今年のダボス会議は、米国のトランプ大統領も含めて70ヶ国の大統領・首相クラスが参加し、過去最高規模で開催されました。
G7の6ヶ国の首相や大統領が参加した中で、ドイツのメルケル首相のスピーチは際立って強く、連立政権の枠組みが整ってダボスへ参加し、第4次産業革命を主導してきた中での危機感を語りました。
その他、政府と企業が一体化してデータを蓄積する中国の国家資本主義とどう対峙していくのか?など様々な問題提起がされていたそうです。
フランスは教育と職業訓練を掲げ、GDPの5%を割き、法人税を22%に引き下げようとしています。トランプ減税により米国も21%と法人税を引き下げましたが、日本はようやく30%です。
英国首相はUberについて言及し、懸念を理由にこうした動きを止めてはいけないと語りました。一方の日本は、世界的な成長産業であるライドシェア産業に入っていけていない状況です。
トランプ大統領は、アメリカは孤立主義ではないということを強調し、自らを自国民が大事なリアリストと称したうえで、法人税の減税に言及し、1つ規制を作るときには、2つ廃止するという考え方を示しました。トランプ大統領は、『アメリカに投資してください』と3回言い、第4次産業革命に対する問題意識とグローバルな政策競争について意識している様子が伺われました。

天気のいいときにしか屋根を修理できない、それが今の問題


松原 聡氏

冨山 和彦氏


経済の見通しに関して他のパネリストは、以下のような見通しを示されました。

松原氏:トランプ減税によって、法人税率のトップの国の税率が下がってきて、法人税率の引き下げ競争の様相を呈しています。日本の法人税率は、世界で7位ですが、フランス、アメリカより上位の国は、これからどうしていくのか? また、米国企業は実効税率が下がったことで臨時ボーナス的に投資を行うことが想定されます。想定するよりアメリカの金利が上昇すれば、日銀は金利ギャップの判断が難しくなるでしょう。

冨山氏:データドミナンスについては独禁法で戦おうとしていますが、EU、米国、中国は既得権がある状態です。日本の公正取引委員会は執行機関ではないので、競争政策のフレームワークを打ち出せていません。日本も競争政策を考えることが、ますます必要になってきています。第4次産業革命に関するルールについては、総務省が抑制的なものを作る傾向にありますが、競争政策は大事なポイントになってくるでしょう。基本的に日系企業の環境はいいものの、良いところで緩むところがあり、今はその境目ではないかと感じています。緩まなければいいが、緩むと来年から落ちる可能性もあるでしょう。

竹中氏:安倍政権は頑張っているが、次の時代を作るところまではできていないとして、「天気のいいときにしか屋根を修理できないが、修理できていない」それが今の問題だと指摘しました。米国金利が上昇し、ドル高が進行して世界から米国に資金が戻り、新興国ではインフレが起こると予想される中で、逆の現象が起きている今、今後の見通しはいずれのパターンも想定されます。とはいえ、米国の財政金融政策の影響は世界の資産市場に大きな影響があることに変わりはありません。日本の潜在成長率は1.8%と楽観的であるものの、米国の動きで資産市場に影響があることを考えると良いときこそ改革の必要があると改めて強調しました。


日本の改革は世界の周回遅れ、世界についていけていない?!


原 英史氏

平 将明氏

野村 修也氏
日本において改革は進行しているのか?という問いに対しては、原氏、平氏、野村氏が応じられました。

原氏:第4次産業革命についての議論がなされていますが、日本の構造改革は2周遅れではないでしょうか。働き方改革も規制改革も世界では終わった課題。日本だけ取り残されて、残課題をなんとかしようとしているような状況です。岩盤規制改革や電波オークション、電力自由化も世界では80~90年代に議論されていました。世界は先にいっていて、新しい社会の中でどう社会構造を変えていくのかという議論をしているが、日本はいきつけていないというのが実情です。

平氏:成長戦略としてTPPや規制改革、国家戦略特区なども掲げられているが、現状の国会では加計問題のディフェンスの答弁で精いっぱい。総理がリーダーシップをとることに対して、引き気味の傾向があります。サンドボックス型特区を自民党から提案して政府の成長戦略にも盛り込まれたものの、政府になげると後退してもどってくるという状況です。働き方改革については、雇用の流動性という一周前の課題に向き合っている状況です。裁量労働制の議論を片付けないとその次にいけないと思います。

野村氏:憲法改正や改革の話がでていますが、日本の社会の仕組みが改革できない仕組みになっているのが問題。これは、役所のせいではなく法学部が悪いと最近感じています。米国のロースクールで米国は初めて技術的な法律を学ぶのですが、日本のロースクールでは法学部教育をやってしまっています。東西冷戦時代に、法学部ではマルクス経済を教えていて、その考え方を持っている人が社会の中心にいて経済を権力でコントロールする傾向にあります。1回失敗したら規制を作るのが当たり前になっている中で、憲法改正は試金石となるでしょう。根本的には、社会や豊かな暮らしを創るために法律があるということを経験することが必要です。

後半は改革の各論としてコーポレート・ガバナンスと働き方改革のテーマを移して議論を進めていきました。(後編へ続く)


該当講座

2018年の政治・経済・政策を斬る
2018年の政治・経済・政策を斬る

毎年恒例の「チーム・ポリシーウォッチ」によるシンポジウム。
2018年の世界情勢、日本経済や金融市場はどう推移するか?日本の政策の論点は何か?そして、安倍政権の下で本当に必要な改革が進むのか考えます。
竹中平蔵/冨山和彦/野村修也/松原聡/岸博幸 ほか多数


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