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<チーム・ポリシー・ウォッチ>2017年の政治・経済・政策を斬る~日本で働き方改革は本当に進むのか~

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更新日 : 2017年03月14日 (火)

第2部 「働き方改革」について

引き続き竹中氏司会のもと、中央大学法科大学院教授/森・濱田松本法律事務所客員弁護士 野村修也氏、株式会社ザ・アール 会長 奥谷禮子氏、昭和女子大学 グローバルビジネス学部長・特命教授 八代尚宏氏が登壇しました。

働き方改革とは、そしてその問題点とは





人工知能、ディープラーニングなどの画期的な技術進歩により、世の中が急速に変化している中、日本では高度成長期の働き方を未だに引きずっており、にも関わらず、今「働き方改革」と言われているものは、例えば長時間労働の短縮など矮小化された議論になりがちです。こうした状況を踏まえて、第2部はまず八代氏から、働き方改革の内容やそのポイントについて共有がありました。

●働き方改革とは大きく分けると、
(1)正社員と非正社員の賃金格差の是正を目的とした、同一労働同一賃金
(2)解雇の金銭補償ルール
(3)労働時間の改革(長時間労働の是正と多様な働き方)の3つで、その中でも最も進んでいるのは同一労働同一賃金。
●正社員と非正社員の格差是正に関しては、正社員の働き方が年功制であることが日本独特の背景。労使自治により今の賃金格差があるため、これを変えるためには政府の介入が必要。
●企業が責任を持って正社員に対して賃金評価をおこない、労働者からの要望に応じてその判断基準を開示することを義務付けなければ、同一労働同一賃金は実現しない。
●今回出た同一労働同一賃金のガイドラインの重要なポイントは主に2点。1点は、無期労働者、つまり正社員と同じ勤続年数の非正社員には同賃金を支給するという点。これは短期間で辞める非正社員が大部分であるため、実質的には役に立たず、賃金格差は残ってしまう。
そしてもう1点は、キャリアコースの無期雇用の賃金は、それを指導する有期雇用の人よりも高くて構わないという点。
これは年功昇進、年功賃金の正当性を確認しているわけで、まさに現状を肯定するようなことが書かれている。そのため、非正規をなくすという安倍内閣の方針に沿っているのかが疑問。また、雇用の流動化については全く書かれていない。
●非正社員は今後5割を突破するのは時間の問題。定年退職後の再雇用など、同じ仕事をしていても賃金格差が生じる。
●女性の管理職比率については、実は問題となっているのは男性の正社員。男性が正社員として同じ企業に長年いることで、勤続年数に応じて管理職になりやすいため、女性が機会を失う。男性の働き方を変えなければ、同一労働同一賃金の実現は難しい。
●解雇の金銭補償ルールについては、救済手段の訴え方によりずいぶん補償金額が異なる。裁判に訴えなくても近い効果を実現しようというのが今の動き。
●労働時間については、ルールが厳しいのではなく弱すぎる。労働条件が相対的に良くない中小企業の方が長時間労働は少なく、労働条件が良いはずの大企業で長時間労働が発生している。エグゼンプション(労働時間規制適用免除制度)とセットで働き方をより柔軟に規制する必要がある。

これを受けて、働き方改革に関する議論がスタート。まず奥谷氏は、日本の産業の中核をどこに置くのかが不透明である点を指摘。これから第四次産業革命に入る中で、働き方改革は、知的労働者に対する改革なのか、今までの時間と生産性が比例しているような労働者に対する改革なのか、両者はまったく異なり、それをまとめて働き方改革と言っているところが疑問であると述べました。

「日本では高度成長期の終身雇用、年功序列と言われるような働き方が正しい働き方であるという前提のもとに、税制も保険制度など色々な制度が作られていて、法制度も然り。けれども、これだけ社会が発展し価値観が多様化していくと、色々な働き方をしたいし、業種によって色々な雇い方をしたい。そうした状況に合わせたフレキシブルな働き方、雇い方ができるようにしてもらいたいというだけなのに、そうした議論に全くなっていない。」と竹中氏も懸念点を指摘しました。

野村氏は、労働生産性が低いのはホワイトカラーで、非製造部門が特に顕著であり、ここを改革するのが一つの働き方改革の主要な課題であると述べました。賃金が成果に紐付けられていないこと、年功制により、若いうちに一生懸命働いてもそれほど賃金に跳ね返らず、年を重ねてから賃金が上昇していく仕組みとなっているため、そこにしがみつく人たちが出て来る。労働生産性の低いホワイトカラーの人が管理職となって、新しい仕組みを現場が見えない状態で作ってしまうことで、ますます現場に負荷がかかってしまうような構造であることを指摘し、「こうした働き方を脱却していくためには、自分の仕事が生産性につながっているということ、誰かの役に立っているということ、それを評価する指標があり、さらには対価と紐付けられていることで、働くことに意味が出てくるという、こうした仕掛けを作らないといけない。このために、基本となっている、もともとの正社員の働き方をもう一度見直さなければ、基本的には実現しない。」と述べました。


労働市場の問題点を解決するため、具体的にするべきことは?


現在の労働市場の問題点が明らかになってきたことを踏まえ、具体的に何をすれば良いのか、政府でできること、個人でできること、そして企業でできることは何なのかという議題に移ります。

まず奥谷氏は、人材が固定化してしまっているのは大企業で働いている社員で、流動化を促進していくためには、大企業が新卒採用ではなく中途採用に重きを置き実現していくことが重要であると発言。野村氏からも改革のために必要なアイディアが共有されました。さらには、国が実際に行っている施策として、2013年に作られた「雇用労働相談センター」も話題に上りました。「雇用労働相談センター」は、国家戦略特別区域法に基づき、新規開業直後の企業や海外からの進出企業等が日本の雇用ルールを的確に理解し、個別労働関係紛争を生じることなく円滑に事業展開できるよう設置されたものです。こうした取り組みについてもより広く活用されるべきであるという意見も上がりました。

こうした議論を踏まえて、八代氏は、高度成長期の企業のやり方が、環境が変わってもそのまま維持されていることが問題で、最初は政府が動くことで、その動きに従って企業も変わっていくことができると述べました。また、東大の柳川則之先生が打ち出す「40歳定年制」を挙げ、40歳までの間は色々な職種を経験し、その後自分の能力に合った職種を決めることで、年功賃金制ではなくなり、何歳まででも働くことができるような環境となる。このようにして定年制をなくすことが、実は一番大事な改革であると訴えました。

また野村氏は女性の働き方について、男性と全く同じ働き方である必要は必ずしもなく、それも多様性として受け入れていくことにより多様な働き方が導入され、女性の活躍の機会も増えると述べ、八代先生はこれに対し、例えば妻が専業主婦で夫がバリバリ働くといった、夫婦や家族単位のワークライフバランスから、個人単位のワークライフバランスへと変えていく必要があると提言しました。

その後も、第1部で登壇した方々からも様々な発言がありました。
「働き方改革は、これから少子高齢化、人口が減少していく中で、働く人間をどう確保するのかという点が求められている。そのためには、やはり女性が働きやすい形にして、外国人労働者や高齢者についても同様にダイバーシティを確保し、大企業の一斉採用や年功序列を変えていかなくてはならない。」「日本の労働者の主たる人々にとっては、時間あたりの賃金をどれだけ上げることができるかがリアルイシュー。日本の生産性が本当に低いのは実はこのゾーンで、圧倒的にマクロ経済に影響を与えている。」など、活発な議論が交わされました。

竹中氏は、「ごく一部の高度な技術を持った労働者も重要ですし、一方で政策の場では、大企業や大手の労働組合を代表する人の意見が参考とされる。しかしそのどちらにも属していない人が恐らくほとんどであって、その人達の間で、さらに多様な働き方が正当化されなければいけない。そして、多様な働き方の間で、不平等がないようにしなければいけない。そのことに尽きるのではないかと思います。」と締めくくりました。


該当講座

2017年の政治・経済・政策を斬る
2017年の政治・経済・政策を斬る

2017年の世界情勢、日本経済や金融市場はどう推移するか?日本の政策の論点は何か?そして、安倍政権の下で本当に必要な改革が進むのか考えます。
竹中平蔵/冨山和彦/ロバート・フェルドマン/野村修也/岸博幸 ほか多数


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