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ローソン社長新浪剛史氏が描く、イノベーション・フロンティア

日本元気塾プレセミナー

更新日 : 2009年09月10日 (木)

第4章 社会と共生する上で、企業の価値をどう位置づけるか?

米倉誠一郎(左)、新浪剛史(右)

新浪剛史: 「ホスピタルローソン」は、その病院が持っている歴史や背景を考慮してカスタマイズしています。そうしないと、なかなか受け入れてもらえません。慶應義塾大学病院の店ではいろいろ工夫をして商品も絞り込み、一番奥には医療用に必要な商材も用意しました。

職員の方が喜んでくださったのは、「夜の勤務だけれど、切符が欲しいとき『Loppi』(編注:ローソンの店頭に設置してあるマルチメディア端末)を使って買える」ということです。我々としては「こんな使い方があるのか」という発見があり、ここでもお客さまから学ぶことがたくさんあります。

東京大学の店は、もともとは安田講堂の裏の倉庫でした。ある面白い社員がいて、「独立行政法人化するなら、東大が一番大きい国立大学だ」と出かけていって、倉庫を見つけて「ここだ」と言うのです。「倉庫をどうするんだ? 隣に生協があるだろう」と言うと、「いや、やってみなきゃわからない」と。

このアイディアを東大は「面白い」とすぐ採用してくれました。東大には使われていない技術がたくさんあって「それを世の中に出しましょうよ」ということで、ローソンをプラットフォームとして環境技術を使うなど、提携しています。

環境対応ということで広島県の呉市では、新しい環境技術を駆使したコンビニをつくりました。

また、『Loppi』を使ってCO2の排出権取引をやったのですが、皆さんの関心の高さに驚きました。どういうことをしたのかというと、弊社のホームページで「自分が1日にどれだけCO2を排出したか」計算できるので、削減できなかった分の排出権を『Loppi』から買っていただき、その分をオフセットできるようにしたのです。

ケータイバッグ運動もやりましたし、電気自動車もこれから150台、業務車両として走らせます。高速充電器をローソンに入れると、電気自動車が普及するでしょう。世の中に普及させようというのが、我々の考え方です。ボディのロゴは初め「ELECTRIC VEHICLE」だったのですが、それじゃわからないし、日本なのだからと、漢字で「電気自動車」にしました。漢字っていいでしょう。社長命令は滅多に出さないのですが、これだけは変えさせました。

はじめに米倉先生がおっしゃった、「次の新しい資本主義」について、私は「企業の価値を社会との共生で何に求めるか」ということが大変重要だと思います。

ローソンは創業30周年で、企業理念を「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」と新しく変えました。そのときに「本当に24時間営業でいいの?」という議論も出たのですが、功罪必ずあるわけです。「便利になりすぎる社会って、本当にいいのか?」とか、こんなことも真面目に議論しています。

これからは、こういう理念のもとにその会社の価値が決まってくると思います。短期的な収益をおろそかにしてはいけませんが、先々長期にわたって地域のお客さまにご愛顧いただけるかどうかは大事なことです。

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