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ローソン社長新浪剛史氏が描く、イノベーション・フロンティア

日本元気塾プレセミナー

更新日 : 2009年08月17日 (月)

第3章 世代や地域のニーズから生まれた店舗展開

六本木ヒルズ「アカデミーヒルズ」セミナーの様子

新浪剛史: 我々の事例をいくつか紹介しましょう。ローソンでおばあちゃんが買い物をしていたので「うちに置いてない物で欲しいものは何かありませんか?」と尋ねたら、「買えるものがほとんどない」とおっしゃったのです。いろいろ伺ってみると、料理をするので野菜や果物が欲しいと。「じゃあ、料理をできるようにしよう」と、適量小分けという発想で、オリジナル商品を全部105円にした「ローソンストア100」をつくりました。

今だから言えるのですが、最初は大赤字でした。取締役会から「やめろ」と言われたのですが続けました。すると、コンビニは大体300〜400店やらないと利益が出ないといわれるなか、70店で儲けが出るようになったのです。そして「SHOP99」の1日当たりの売上を抜いてしまったので、TOB(編注:Take Over Bid=株式公開買付)をかけたのです。

ローソンプラス(サンライズカラーのローソン)はブルーのローソンとは違い、ご高齢の方々や単身の方々向けに地方でやっているモデルです。ご高齢の方々はブルーのローソンには「入りづらい」とおっしゃるのです。「じゃあ、イメチェンしよう」と、看板を替えました。

このお店は、「ローソンストア100」より伸びています。中には小上がりがあって食べられるところもあり、毎日のようにおじいちゃん、おばあちゃんがきて買ってくれるのです。やってみなければわからないんですよ、皆さん。

「HAPPY LAWSON」は、これからのコンビニをつくろうということで、新聞でアイディアを募集して、「1等賞をとったものは必ずやります」と約束をしました。そうしたら、「子育てをしている家族にうれしい、のんびりできるローソン」が1等賞になったので、つくりました。

山下公園の店に3カ月か2カ月に1度、土日に行くのですが、ここにはすごく発見があります。コンビニが新しい世の中に何か貢献でき、それがゆえに利益になるモデルがあるのではないかと思い、やっています。

コンビニは子育てとは縁遠いとか、添加物がどうとか、いろいろ言われるのですが、商品を開発するにあたって「子どもにいい」ということは、当然大人にもいいわけで、お母さんたちからいろいろなアイディアをいただいています。

石川県の山代温泉ではバブルが弾けた後、仲居さんが余っていたようで、友人から「コンビニをやりたい」と言われました。そこで開発担当を紹介したら、その担当者が『湯の町なんだから、「ゆのまちローソン」にしよう』と、足湯のあるローソンをつくったのです。せっかく温泉に来たのに、都心と同じローソンじゃつまらないというわけです。そして仲居さんたちに、「マニュアルは関係ない、徹底したサービスをしよう」と言って実行したのです。そうしたら、それが評判がよかったのでもう1店つくりました。

ここでは地元の人たちのコミュニケーションがすごく深くて、ここでなければ買えないものも結構やらせてくれるのです。「ゆのまちローソン」は大繁盛しています。

こうして一般的には無駄だと思われるようなことでも、お客さまが愛情を感じてくれたり、親しみやすさを感じてくれたりすることをやっています。これまでは「コンビニ=非常に効率的なモデル」でしたが、今は地域によっては、ちょっとした遊びをお客さまは求めているのかなと思っています。

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