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未来を変える人たち

発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動

更新日 : 2009年08月12日 (水)

第3章 社会開発のためのマイクロファイナンス事業

ファザル・H・アベド氏

ファザル・H・アベド: BRACが行っている乳児の支援プログラムは、現在、3,500万人をターゲットに実行しています。成功すれば全国的に普及させる予定です。乳児の死亡率の減少は、出生率を引き下げましたが、私たちは、2065年ないし2070年頃に、バングラデシュの人口が2億4000万人で安定することを期待しています。

今バングラデシュは、増え続ける人口を養って行くために、いかにして144,000平方キロメーターの国土面積に、現在の2倍近い2億4000万人の人口を収容するかを検討しているところです。

この30年間で、バングラデシュの農業生産性は向上しましたが、BRACは、将来に備えて、より高品質の品種および農業方法を研究しています。研究の成果を現在はビジネスにしています。

BRACは、マイクロファイナンス(無担保小規模融資)を行っています。現在900万人の借主を抱えていますが、そのうち800万人はバングラデシュ在住で、彼らの多くは小さな畑を所有し、野菜や米を生産したいと考えています。しかし、彼らが必要としているのは資金だけではありません。彼らの多くは、高品質の種子を所持しておらず、肥料の適切な量を把握していません。国は、多くの食糧を必要としています。ですので、BRACの農業ビジネスは人々の収入を改善させることであり、またそれによって得た利益を社会開発に還元することでもあるのです。

マイクロファイナンスは、私たちの最も大きな事業です。国内に抱える800万人の借主のために、各事務所には10人のスタッフがおり、1人あたり借主500人を担当しています。

かつて、貧困層に200ドルを貸し付けたところ、彼らは返済のための貯金をすることができず、1年後に返済を受けることができませんでした。それで、BRACは、毎週分割返済方式にしました。

BRACスタッフは、毎週借主と面会します。大変な作業に聞こえるかもしれませんが、返済のための集会は小グループに分かれて行われます。借主には通帳を渡し、返済した額を記入します。本部で管理されている統合会計システムの導入により、借主中何人が返済金未払いなのかを把握することができました。

その結果、すべての借主が必ずしも同じ経済状況ではないことがわかり、私たちは3つの窓口を作りました。貧困層プログラムのための窓口、農家のための窓口、マイクロ企業家のための窓口です。

借主には、貧困層の者もいれば、耕作機や肥料を購入するための資金を必要としている小規模農家の経営者もいます。後者の場合は、最貧困層ではなく、社会から取り残された農家です。マイクロクレジットではカバーできない最貧困層も存在しますが、反対に、より大規模な融資を必要とする比較的裕福な層が存在し、彼らは事業を行っているため運用資金を必要としています。彼らに対し最低限必要としている資金を提供しますが、このグループは毎週分割返済する必要はなく、毎月払いになります。

さらに、担保提供ができないために銀行からの融資をなかなか受けられない中小規模の企業家がいることが判りました。そこで、彼らを援助するために、キャッシュフロー等の調査をして業績状況等を分析したうえで、事業が健全であると判断できれば、無担保でローンを提供することにしました。経営者を信頼できるかどうかも確認します。

それから、私たちは、マイクロクレジットよりも大規模な本格的ビジネス向け融資活動も必要であると判断し、2001年にBRAC銀行を設立しました。BRAC銀行の目標は銀行としての利益を生むだけではなく、バングラデシュ国内の中小企業が新しい雇用の機会をもたらすように支援することです。なぜなら中小企業は大手企業よりも低いコストで雇用することが可能で、それだけ雇用の機会が増えるからです。


該当講座

未来を変える人たち
発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動
ファザル・H・アベド (BRAC創設者兼会長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

いま、ダッカが熱い。「BRICs」に続く新興国「NEXT11」の一つであるバングラデシュ。かつては最貧国と言われたバングラデシュでは、近年5%成長という目覚しい発展が続き、この10年間で貧困層が10%以上減少したといいます。そこでは、まさに現代社会が直面する新しい資本主義の形が追求されているのです。....


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