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オバマ大統領と今後のアメリカ

ライブラリートーク 「日本の政治シリーズ 第1回」

更新日 : 2009年06月10日 (水)

第1章 オバマ大統領には哲学があるが、日本の首相には…

日本にも「チェンジ」が必要
そう語るのは親日派として知られるジェラルド・カーティス教授。
己の哲学を持ち、国民を説得する努力を惜しまないオバマ大統領のリーダーシップと外交戦略を解説しながら、日本の政治の問題点を指摘します。
選挙で誰に投票するか、選択眼が鍛えられるレポートです。

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授
ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

ジェラルド・カーティス: 今回は主にオバマ大統領とアメリカ、そしてオバマ政権と日本との関係をお話しします。私は日本について40年以上も研究しているので、日本の政治も非常に気になります。

現在、アメリカの経済情勢は深刻です。日本もよく似た状況ですが、日本人と比べるとアメリカ人は希望を持っています。それはやはり、希望を与える大統領がいるからです。一般の人たちは「オバマさんなら頑張ってくれる、何とかしてくれる」と思っています。

最近、日本人はかわいそうだと私は思います。「政治はその国民のレベルを反映するものだ」とよく言われますが、日本人のレベルがこんなに低いとは思えないからです(笑)。なぜ、この国の政治はこうなってしまったのでしょうか。

でも、今年(2009年)は日本の政治にとってエキサイティングな年になると思います。半世紀以上続いた一党支配、自民党支配が終わるのです。選挙結果がどうなろうと、自民党一党がずっと政権を持つ時代は終わり、いろいろ面白い変化が起きると思います。決して悲観的になる必要はありません。

では今日は、まず、オバマ大統領のどこがいいのかをお話したいと思います。彼が偉大な大統領になるかならないかは、現時点では何とも言えません。ただその素質を持っている人だと思います。

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

偉大なリーダーの条件は国によって多少変わりますが、基本は同じです。それは「自分の哲学がある」ということです。哲学があれば政策面で、まずブレません。ブレる人は哲学がないのです。 「政治は妥協の産物」と言われるぐらいですから、オバマ大統領も妥協はするのですが、彼がやろうとしていることは基本的には変わりません。オバマ大統領は、一般の国民の立場でものを考えています。ブッシュ政権の8年間でアメリカでは格差が大変な問題になりました。日本では考えられないような格差がアメリカにはありますが、それを縮小しようとしています。 オバマ大統領が素晴らしいのは、それと同時に30~50年先のアメリカについてビジョンを持ち、「それを実現するために何をしなければならないか」を考え、すでにやり始めていることです。ですから彼は今、教育や健康保険、省エネ分野を中心に予算を組もうとしています。 日本も今、莫大な財政出動をしようとしています。麻生首相は新たな補正予算を組むと言っていますが、何に使うかが一番の問題です。「どういう国にしたいか」という哲学がなければ、「何に使えばいいのか」という問いに対する答えは出せません。今までのように公共事業でハイウェイや道路を造っても、あまり意味がありません。