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カフェブレイク・ブックトーク「旅先で気になる建物たち」

更新日 : 2009年05月29日 (金)

第6章 日本の‘モダン’建物


国内には江戸時代以前の神社仏閣、城郭、武家屋敷、商家・豪農宅などたくさんあります。それらは観光旅行やビジネス旅行の合間にわざわざ訪ねて行くような名建造物です。

しかしそうではなく、観光旅行やビジネス旅行の道すがらふと見つけて、案内板もなく、ただ悄然とそこにあるような建物がまだまだ少なからずあります。気になる建物とはそういうものなのですが、最近ではそれらの多くが名建築として認知され、それらについてさまざまな本が出されています。

『名建築の肖像』(桑原綾子画、03年河出書房新社刊)、『京都大正ロマン館』(鳥越一朗著、06年ユニプラン刊)、『出会いたい東京の名建築』(三舩康道著、07年新人物往来社刊)、『大大阪モダン建築』(橋爪紳也監修、高岡伸一・三木学編著、07年青幻舎刊)、『名建築に逢う』(東京新聞編集局、08年東京新聞出版局刊)、『昭和モダン建築巡礼〈東日本編〉・〈西日本編〉』(磯達雄著、宮沢洋画、06~08年日経BP社刊)などなどです。

また『近代名建築で食事でも』(稲葉なおと著、07年白夜書房刊)や『クラシックホテルの物語—郷愁の時を訪ねて』(中村嘉人著、08年エム・ジー・コーポレーション刊)などホテル、旅館、レストランなどに特化した建物の本もあります。また明治期以降の和洋の建物の建築について建築学者鈴木博之は『建築の遺伝子』(07年王国社刊)で建築での‘モダン’は西欧化だけではなく、わが国伝統文化の再確認を模索した表現を残していると主張しています。

ところで今回取り上げた本のほとんどは建物の図版として写真が掲載されています。建築写真家の下村純一は、『写真的建築論』(下村純一著・写真、08年鹿島出版会刊)の中で「写真は私たちが気づかない建物の何かを拾っている」と言っていますが、確かにそうかもしれません。旅先の一時の感傷ゆえではなく、日常生活の瞬間瞬間に建物が私たちに伝えているメッセージを読みとることができる心の余裕を持ちたいものですね。