記事・レポート

カフェブレイク・ブックトーク「旅先で気になる建物たち」

更新日 : 2009年04月22日 (水)

第4章 ハレの街で私が気になった建物は、アール・ヌーヴォー様式


ところで、私がかつて東ドイツに配されていたハレで見たあの「生きている内にその建物に出会うことができてよかったなぁ」と思った建物はかつてどういう存在だったのでしょうか。

帰国後私は、『死ぬまでに見たい世界の名建築1001』(M・アーヴィング編、出版翻訳ネットワーク訳、08年エクスナレッジ刊)、『ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか』(佐野敬彦著、08年平凡社刊)、『ヨーロッパの古き佳き建物』(横山美恵子著、2000年青娥書房刊)などで調べてみました。

アーヴィングが編集した本は建築物のハンドブックで、クフ王のピラミッドから北京オリンピックのメーン会場となった北京国家体育場までの古今東西の名建築を図版入りで解説しています。建築美術史家の佐野敬彦の本はフランスとイタリアの都市を構成する仕掛け(建物、広場、モニュメント、パサージュなどなど)のおもしろさを解説しています。そして華道家の横山恵美子の本は彼女自身がヨーロッパ滞在中に気に掛かっていた建物の写真集です。

私が気に掛かっていた建物とそっくりな建物の写真をこれらの本で見つけました。どうやら私の建物は『図説アール・ヌーヴォー建築』(橋本文隆著、07年河出書房新社刊)で‘華麗なる世紀末’と言われた19世紀末期から20世紀初頭にかけて、主としてヨーロッパで盛んであったアール・ヌーヴォー様式の建物だったようです。

『アール・ヌーヴォーとアール・デコ—甦る黄金時代』(千足伸行監修、鹿島茂他著、01年小学館刊)などを見ますと、その様式は建物、建物の内装、彫刻、絵画、服飾、装身具、食器、書物の装幀などなどに一貫するデザインで、「人びとの日常生活における機能性と装飾美の融合」などの理念を背景に生み出されたと言われています。