記事・レポート

完全デジタル化がもたらすメディア変革

~これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み~

更新日 : 2009年04月10日 (金)

第6章 「ひょっとすると将来、テレビないですよ」

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長

神 原: 95年に日本テレビのウェブサイトをつくったときの効果や、社内的な評価の指標はどんなものだったのでしょうか。また今、「第2日本テレビ」のサイトや広告コンテンツなども、やはりクライアントや社内からデータを求められると思うのですが、どういう形でご説明なさってきたのですか。

田 村: 当時は、その前段として「マルチメディア」という言葉が世の中に喧伝されました。CD-ROMやパソコン通信などがあったわけですが、僕は当時新規事業開発の担当だったので、「マルチメディアはわかった。パソコンも高度化したし、いろいろなことができるよね。ただ、商売として物になるのがないね」ということで非常に悶々としていたのです。悶々としていたときに最初のブラウザ「Mosaic(モザイク)」を見て、「ああ、これでいいじゃん」というふうに思った。みんなそこに飛びついたわけです。

そういう意味では、そう思った人が当時いっぱいたんですよ。彼らは悶々としていても社内説得力があって、「ひょっとすると将来、テレビないですよ」とか、いろいろなことを言いながらやったというのが当時の思い出ですね。

神 原: 95年から、「ひょっとしたらテレビないですよ」という話はしていたのですか。

田 村: それは全世界的に言われていました。ウェブができたときに、「静止画の次は音声、そのあとは映像にいくでしょう。そうするとテレビってもう要らないよね」という議論は、95、6年にはもういっぱい本も出ていましたね。

神 原: 一方、Yahoo!などのポータルサイトが成長してきて、ユニークユーザーの数であるとかページビューに指標が移ってくる中で、ウェブサイトを運営するのにコストがかかっていたと思うのですが、どういう社内コミュニケーションをされたのですか。

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長
田 村: まあ、基本的にはまだ余裕があったのではないでしょうか。屋台骨を壊すほどではなかったということで、各局ともそうなのですが、ある程度大目に見てもらってきたのかなという感じがあります。当然今は、アクセス数などはクライアントに対して大きな指標になっていますよ。

神 原: 今までいろいろな成功も失敗も含めて、いろいろあったと思います。ぜひ、失敗談があればお聞かせいただきたいのですが。

田 村: 小さいのはいっぱいあるのですけれど……。基本的には10何年たっても、ポータルさんとの距離がなかなか縮まらないとか、あるいは、特にウェブの世界には、金がまだ回っていないとかですよね。実態に比べると経済がまだまだ動いていないという感覚が、正直あります。

神 原: 「第2日本テレビ完全無料化」というニュースリリースをリニューアルと共に発表(2008年10月20日)されたので、そのように認識していたのですが……。それまで有料動画配信とかもやっていましたよね。

田 村: 「第2日本テレビ」のサイトがスタートしたのは2005年10月。これは僕というよりは“Tプロデューサー”で有名な先輩の土屋が言い出しっぺなんです。当時、僕は支えているだけだったのですが、かなり難しいインターフェイスだったので、今はシンプルになっています。今回のリニューアルの一番の特徴は、動画のフラッシュ化です。当時の「第2日本テレビ」って、動画を再生するまでに10回位のクリックが必要だったんですが、今は1回です。


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〜これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み 〜
田村和人 (日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

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