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自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~

アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月21日 (火)

第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」

ビデオメッセージで参加したロバート・フェルドマンさん

岸博幸: きょう、本当は特別ゲストで本間正明先生にもご参加いただくはずだったのですが、どうしても抜けられない急用が入ってしまったということで、きょうは欠席とさせていただいております。

ほかに、ポリシーウォッチのメンバーであるモルガン・スタンレーのロバート・フェルドマンさんも「何とか参加したい」と言っていたのですが、海外出張が入りまして、きょうは参加できません。個々のメンバーから最初の問題提起をいただく前にフェルドマンさんが映像で、「ぜひみんなに聞いてほしい」というコメントを託してくださいましたので、まずその映像をごらんいただきたいと思います。

ロバート・フェルドマン:皆様、こんにちは、実は本日、皆さんとライブで話をしたいと思いましたけれど、出張ですので、このような形で話すことになりました、大変申しわけございません。

今回、政治の新陳代謝が非常に早くなりました。総裁選だけではなく、そろそろ総選挙ということになると思います。この総裁選、総選挙は何が一番のポイントなのでしょうか。経済の観点、市場の観点から見ると、「日本経済の持続性」ではないかと思います。株価がどう反応するか、皆さんの生活水準が守れるかどうか、それが問題です。

さて、少しだけ数字を使わせていただきたいと思います。これから5年間、日本の雇用者の数はどうなるか。計算をしますと、私の試算ですが、マイナス 0.7%です。下がっていきます。そうしますと、生活水準を守るには、働いている人たち1人ひとりの生産性を上げなければいけません。このニーズが非常に高いと思います。

さて、生産性は昔、どうだったかということですが、1990年代の10年間の平均をとりますと、大体1%しか伸びませんでした。いろいろな改革が進まなかったから、そうなったと思います。しかし80年代はどうだったか。生産性の伸びは3%でした。

これから毎年0.7%ぐらい雇用が減る場合、90年代の1%がいいのか、80年代の3%がいいのかということですと、当然、3%の方がいいわけです。そうしなければ、実質GDPの成長率はほぼゼロになる可能性があります。

加えて、今、原油が高いという状況がありますので、さらに生産性をそれ以上に上げないといけないニーズがあると思います。

さて、どのように生産性を上げるのか、それが非常に大きな政策問題だと思います。いくつか例を申し上げます。

皆様、ご存じかと思いますけれど、農業についてですが、今、日本の農地が何%使われていないのか、つまり耕作放棄が何%なのかを見てみますと、約1 割です。10%が全然使われていないのです。もったいないですね。もっと農地を有効に利用できるようになるための政策はたくさんありますし、その政策を実施すれば、地方が豊かになります。もしかすると、日本は北半球のニュージーランドになれるかもしれません。

また、役人の配分は非常に大きな問題です。医療機器は、これからの非常に大事な問題ですが、日本で医療機器を審査している人たちの数をご存じですか。わずか30人しかいません。反面、北海道開発局に役人が何人いるか、ご存じですか。5,800人です。明らかに公務員の配分が今の日本経済に合っていないということです。この問題をどうするかも、生産性を上げる大事な話題ではないかと思います。

すなわち、「成長なくして老後もなし」ということが、今回の選挙のキーポイントではないかと思います。

さて、金融市場、株式、債券などの視点で今回の総裁選をどう見るかということですが、一言で言いますと、「成長なくして株価なし」ということではないかと思います。正確に言いますと、成長の展望がなければ、企業収益は上がりません。企業収益が上がらなければ、株価も上がりません。加えて、財政を再建できなければ、長期金利が急騰する可能性が高いと思います。かつてのイタリアのように、日本も財政の負のスパイラルになってしまう可能性があります。そうしたことを国内、海外の投資家は注目しています。

ですので、今回の総裁選と、その後の総選挙は、経済にとっても、株価にとっても、もちろん、我々納税者の生活水準にとっても、非常に重大な選挙ではないかと思います。どうもありがとうございました。

※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。

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