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これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~

更新日 : 2008年02月22日 (金)

第9章 米国の知恵は、寂れた場所をしばらく放っておくこと

隈研吾
隈研吾: アメリカがすごいなと思うのは「駄目になったところをしばらく放っておく」という知恵です。ニューヨークの都市開発が失敗してハーレムになったけど、そのまま放置しておきました。日本は放置しておくことをすごく怖がるけれど……。

これは『都市の護送船団』に書いたことがあるんですが、駄目になったところを放置しておくのにもお金がかかるし、周囲にもいろいろしわ寄せがきます。でも、辛抱していれば、必ず別の波が来るんです。

「ちょっと危なくても、汚くても、住んでみようか」というアーティストとか若者が出てきて、そこに住み始める。それがきっかけになって別の循環が生まれる。新しい地域のキャラクターが生まれてくる。しかし、日本人はできないんですよ、怖くて。

竹中平蔵: 今の話は、最初の「オープンスカイ」の話にもつながりますね。日本の行政は必ず過去の政策との整合性を問われる。悪くなったら責任を追及されるから、繕わなきゃいけない。だから、効果がなくても継続的にお金を投入し続ける。非常に非効率な投資をしているんです。これは日本社会の風土と言いますかね、過去との整合性を求めるんです。別の言い方をすると、役人の無謬性を維持するために大きなコストが発生しているんです。

先程のオープンスカイも同じで、羽田の24時間化を嫌がる最大の理由は「じゃあ、成田をどうするの」、「成田であれだけ大揉めしていろいろやってきたのに、国土交通省の立場がなくなるじゃないか」ということなんです。要するに、国家の利益じゃなくて、役人の無謬性の問題です。同じことが都市計画にもあるのだと思います。

米倉誠一郎: 国民も悪いんですね。

竹中平蔵: 国民もそうですが、マスコミにも責任がある。日本が規制でがんじがらめになったのは、国会で当時の野党とマスメディアが「政府は何をやっているんだ。しっかりしろ」と騒ぐから、役人がいろいろな規制をつくってがんじがらめになってしまったんですよ。

米倉誠一郎: 大胆な発言をありがとうございます(笑)。

竹中平蔵: 実際そうなんですよ。「過去の政策には今からみれば間違いもある、しかし、今の時点でなにをするのがベストかを考えよう」というマインドを、国民もメディアも持たないといけないと思います。

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