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これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~

更新日 : 2008年02月20日 (水)

第8章 毎年青森県分の人口が減る時代、国土政策、都市政策は決定的に変わる

米倉誠一郎
米倉誠一郎: 僕もせっかくだからウンチクをひけらかします(笑)。

北山恒さんという横浜国大の先生が言いました。「コミュート(※編注:通勤)するのは、シカゴの大火事でできたコンセプトだ」と。もともとは職住接近だったのを、都心の真ん中にビルを建て、郊外に人を住まわせたのは完全に工業化社会の名残り。猛暑のなかで1時間も通勤したら、もうすべてのエネルギーを吸い取られてしまう。

要するに、知識社会の都市構造はコミュートする構造ではないんです。知識社会は職住接近の都市構造、24時間都市に住むという形がいい。

2030年のビジョンを読み直したら、2010年から2015年の6年間、日本は毎年120万人ずつ人が減るんです。120万人というと青森県の人口に近い。2010年から6年間、日本から青森県が1個ずつ消えるということなんですよ。

皆さん、この意味がわかりますか。「郊外の人たちが東京に戻ってこられる」ということです。世代交代で都心が空くんです。どんどん都心に人が住むようになって街が再構成されていくということです。

個人的にいうと、僕は東京は夜がつまらないと思う。子どもの遊び場ばかりで、我々おじさんがいいなって思える場所がすごく少ないんだな。

……なんですか、竹中さん、その疑いに満ちた目は(笑)。要するに、知的な会話をしながら馬鹿なことをやれるところが少ないって僕はいいたいんです。

竹中平蔵: 多分、私と米倉さんの遊びが違う、ということだと思うんですけれどもね(笑)。

今、米倉さんが言われたことでとても重要なのは人口の変化です。デモクラフィック(※編注:人口統計上)な変化は決定的です。2030年の人口推計によると、私の出身地の和歌山県の人口は約18%減。ほとんどの都道府県で人口が2割ぐらい減る。おそらく国土政策の概念は根本的に変わるでしょう。

今は「地方に住んでいる人はそこに当然住むべきであって、住む権利がある」ということを前提に、地方の活性化を政策の軸にしています。しかし、やがてそんなことを言っていられなくなる。「人口はある程度集約するほうがいい、集約するために補助金を出す」といった発想になってくると思います。

そういう意味では、東京の郊外のあり方をどのように考えるかが、東京の新しい課題になってくると思います。

例えば、ニューヨークの郊外はすごくいいです。郊外なら0.5エーカー、600坪の家に住める。600坪の郊外の家に住むか、マンハッタンのコンドミニアムに住むか、これはなかなか悩ましい選択だけれども、日本も本当にそうなるのでしょうかね。

米倉誠一郎: なりますよ。100万人ずつ減っていくんですからね。発想を転換すれば、楽しいじゃないですか。「俺は国立市で2エーカーだぞ。どうだ、文句あるか」(笑)。そういう選択肢が出てくるという点ではね。

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