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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年06月16日 (月)

第6章 東証の国際化は不可避な課題

斉藤惇

斉藤惇: わが国の金融資本市場をリードしなくてはいけない東証の実体を見ると、英米をはじめとする諸外国に比べて時価総額の絶対額はニューヨークを除いては、なんとか肩を並べられる数字です。ただし、ビジネスモデル、上場商品の内容を検証すると、残念ながらグローバル化が進んでいないのが現状です。これは東京証券取引所が、あるいは東京市場がローカルな市場にとどまり、世界の経済・産業・企業の情報が集っていないことを意味しています。わが国の競争力強化の観点から大きな問題であると言わざるを得ません。

わが国の産業界では、経済連携協定の締結、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)がアジア諸国との間で進んでいて、貿易障壁を下げる方向にあります。しかし、金融面においては東証の国際化が進まなければアジアの企業およびアジアに進出している日本の中小企業への資本の供給が続きません。また、今後の成長のために資本や長期資金を日本に求めるアジアの企業に対して十分に貢献できない可能性があります。これも大きな問題です。そこで東証は、上場商品の品揃えを強化して、わが国の個人金融資産の効率的な運用の場を提供し、効率的な資本市場を作らなければならないと考えています。

経済成長の面で1970年代のアメリカは、現在の日本よりも悪い状況でした。そこで1977年に登場したカーター大統領は、年金の運用ルールを変えました。それまでのアメリカでは、年金は上場の有価証券にしか投資できませんでした。慎重な運用をするのがアメリカでも常識だったのです。ところがカーター大統領は、上場していなくてもビジネスに直接投資できるようにルールを変えたのです。その結果、ビル・ゲイツなどの若者がカルパース(地方公務員の年金)のような資金運用者から直接投資を受けて一気に花が咲くという現象が起こったのです。日本も真似をするといいのですが、そうした大胆な行動の真似はなかなかしません。