記事・レポート

カフェブレイク・ブックトーク「源氏物語千年」

更新日 : 2008年07月07日 (月)

第5章 和歌による想いのやりとり

『源氏物語と和歌を学ぶ人のために』

澁川雅俊: 源氏では物語の筋の展開の要所々々に登場人物のやりとりで、贈歌と返歌による和歌の応酬があります。全巻で795首収められており、物語のそれぞれの状況で主人公だけではなく、登場する人物もさまざまな想いを和歌で表しています。『源氏物語と和歌を学ぶ人のために』(加藤睦・小嶋菜温子編、07年世界思想社刊)が出されたことは、やはりそれらに対する理解が重要だということです。もっともこのことは源氏に先行する『竹取物語』や『伊勢物語』などの王朝物語を楽しむ場合も同様です。

もっとも源氏の和歌については紫式部自身が本文中で「中にはつまらない歌もたくさんありまして、この物語の中でご披露申し上げるまでもありません」などと書いていますので、読み流してもいいものも含 まれているようですが、和歌の良し悪しは別として、ほとんどのものは全巻を通じて物語の底流をなすようなメッセージを込めています。そのことを考えながら 晶子、谷崎、円地、聖子、寂静のものを比較してみると、その歌の取り扱いに微妙な違いがあって興味深いのです。

なお俵万智はこのように取り交わされた和歌に歌人としての思いを込めて、『愛する源氏物語』(俵万智著、03年文藝春秋刊、文春文庫07年刊)を書いています。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

源氏物語と和歌を学ぶ人のために

加藤 睦, 小嶋 菜温子
世界思想社

愛する源氏物語

俵万智
文芸春秋