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カフェブレイク・ブックトーク「源氏物語千年」

更新日 : 2008年06月18日 (水)

第3章 いま源氏を読む

『国境を越えた源氏物語—紫式部とシェイクスピアの響きあい』、『世界の源氏物語—グロ-バルな視点から、その文学と意匠の深遠を探る』

 近年源氏を中心とした比較文学研究やその評価について、『国境を越えた源氏物語—紫式部とシェイクスピアの響きあい』(岡野弘彦、他著、2007年PHP研究所刊)『世界の源氏物語—グロ-バルな視点から、その文学と意匠の深遠を探る』(ドナルド・キーン著、2008年ランダムハウス講談社刊)が出さました。

またライブラリーにウェイリーの英訳"The Tale of Genji"(Charles E. Tuttle社刊)がありますが、英訳はもとより20に近い言語で翻訳されているとのことですから、それはいま世界中に知られています。

『あさきゆめみし』
ですから、日本人なら中学生以上の人たちはみなこの物語のことを知っているはずです。しかしそれほどよく知られていても、それを読んだという人たちはそれほど多くないのではないでしょうか。もっとも中にはまんが『あさきゆめみし』(大和和紀、講談社刊)を見ている方々もたくさんいるかもしれません。

五十年前、高校時代に古文の時間で初めて出会った桐壺の冒頭の一節、「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごと なき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」をいまでも私は諳んじることができます。しかし物語のすべてを読むことはつい最近までありませんでし た。昨秋「源氏物語千年紀」に因んださまざまな催しが企画されていることを知り、俄然「読もう」という意欲が湧き、この1月(2008年)から読み始めました。

与謝野晶、谷崎潤一郎
私が読んだのは、もちろん現代語で書かれた源氏物語で、いま文庫本で手に入れられるものです。与謝野晶子のもの(角川文庫全3巻)谷崎潤一郎のもの(中公文庫全5巻)円地文子のもの(集英社全3巻)田辺聖子のもの(新潮文庫全3巻)、そして瀬戸内寂聴のものを(講談社文庫全10巻)を読みました。

それは普通の読み方ではありませんが、すべて読み終えたのは3月末でした。読み終えた瞬間、かつてマラソンランナーの有森裕子さんが、 アトランタ・オリンピックで激戦の末に銅メダルに終わったときのコメント、 「自分で自分をほめたい」を思い出しました。今度は原文に挑戦してみようかな、などと思いつつも、実際そんな気分になりました。

『源氏物語〈上下〉』
ところで源氏原文は、日本の主要な古典文学を翻刻して収録している岩波書店の『新日本古典文学大系』〔第19-23、別巻〕(93-99年)や小学館の『新編日本古典文学全集』〔第20-25巻〕(94-98年)などで読むことができます。また手軽なところでは対訳『源氏物語〈上下〉』〔日本の古典をよむ〕(阿部秋生 校訂・訳、08年小学館刊)などがあります。

『声で読む源氏物語』
また最近はやりの"声で読む"タイプのもの、たとえば『声で読む源氏物語』(保坂弘司著、07年學燈社刊)なども手軽に原文を読む手掛かりでしょう。またいまでは幾つかのウェブサイトでも読むこともできます。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

国境を越えた源氏物語—紫式部とシェイクスピアの響きあい

岡野弘彦 ミルワード,ピーター〈Milward,peter〉 渡部昇一 松田義幸 江藤裕之 須賀由紀子
PHPエディターズ・グループ PHP研究所

世界の源氏物語 — グローバルな視点から、その文学と意匠の深遠を探る

ドナルド・キ-ン
ランダムハウス講談社

The Tale of Genji

Murasaki Shikibu
Tuttle

あさきゆめみし

大和和紀【原作・絵】 時海結以【文】
講談社

あさきゆめみし

紫式部【著】 與謝野晶子【訳】
角川書店

新日本古典文学大系 〈明治編 19〉

中野三敏
岩波書店

新編日本古典文学全集 〈20〉

紫式部【著】 阿部秋生 秋山虔 今井源衛 鈴木日出男【校注・訳】
小学館

日本の古典をよむ〈9〉 源氏物語〈上〉

阿部秋生 秋山虔 今井源衛 鈴木日出男【校訂・訳】
小学館

声で読む源氏物語

保坂弘司
學燈社