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G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年09月30日 (火)

第4章 サミットは動物園に似ている?

洞爺湖サミットのシェルパを務めた河野雅治さん

河野雅治: シェルパと首脳というのは、あるところから一体になります。首脳を改めて今回も間近に見て、いろいろな姿を垣間見ることができました。首脳はやはり、わがままです。徹底的にわがままだと思います。やはり、そうでなければ国の主導者にはなれないのでしょう。

例えば千歳空港に着いてから、霧の中を車で走ることになったのですが、1時間以上車に乗ったら絶対怒るという首脳もいたようです。待たされるという経験がないんですね。首脳が9人ならまだしも、中国やインドなどから17人が集まってみんなで写真撮影をするときなどは、みんなが集まらないと、一瞬の隙を見つけて1階のパン屋さんに行ってパンを食べる首脳がいたり、もうとにかく大変でした。

私はその前に、「総理、サミットというのは動物園の檻の中にいるようなものですから、そこは上手くやってくださいよ」と言ったのですが、総理は後で「やっぱり、これは動物園だな。まあ動物園と言ってもいいけれど、衆議院の予算委員会みたいなものかな」ということもおっしゃっていました。まあ、なかなかの余裕だと思います。

サミットというのは、そういった稀有なフォーラムなものですから、シェルパの役割が大事になってくるわけです。どうでしょう、動物園に猛獣が入って やるだけでサミットは成功するでしょうか?そこなんです。そうやって自由に首脳が議論する、そういう議論をさせるためにシェルパというものがいて、何と かその準備を整えていく。お膳立てが必要になるということだと思います。

シェルパは首脳にとって、言ってみれば使用人、下僕です。しかし、首脳とシェルパはライバル関係にもあると思いました。シェルパがきちんとやって助けないと首脳はうまく動けない。下僕かつライバルのような首脳とシェルパの関係からして、お互いに必要なんだろうと思います。

今回のサミットでも、何回もシェルパの仕事についての話題がありました。ニコラは必ず言うんです、去年も言いましたが、「俺たちはシェルパの操り人 形なのか?」と。「俺たちは人形じゃないだろう、我々がものを決めなきゃだめなんだ」と手足を振り乱して主張する。私はこれは非常に正しいと思います。彼 らは、決して我々の操り人形ではないのです。「首脳の皆様、我々のやってきた作業にぜひ付加価値をつけてください」と、こう我々は思うわけです。

しかし、「どんな議論があっても、もし皆さんが賛成するなら、こういう合意ですよ」という枠組みを我々がつくり上げておかなければ、結局何も合意で きないということがサミットには十分あり得ます。そういうことですから、我々は召使、下僕ではありますけれども、何となく外から、そういった枠をつくっ て、「どうぞ、この枠の中で議論を戦わせてください」とやる。それがシェルパの役割だと思います。

この話、面白いですか?「まあまあ、面白い」、それはよかった(笑)。