オピニオン・記事

名画は語る

優れた絵画は、優れた物語を生む~ブックトークより

更新日 : 2018年09月14日 (金)

第2章 人間の明と暗をめぐる物語


光と闇の奇才・カラヴァッジョ

澁川雅俊:  次に、バロック期の名画にまつわる物語を3つ紹介します。

最初は《病めるバッカス》を描いたカラヴァッジョです。高度な写実性と共に、明暗の対比を自在に操り、対象を劇的に浮かび上がらせる技法を確立し、バロック絵画の形成に多大な影響を与えたことから、〈光と闇の天才画家〉と評されています。『闇の美術史~カラヴァッジョの水脈』〔宮下規久朗/岩波書店〕は、この画家の作品を軸に、西洋や日本の美術における「光と闇」の歴史を読み解いています。

カラヴァッジョは革新的な作風で名声を得たものの、その人生は波瀾万丈そのものでした。喧嘩、殺人、投獄、脱獄、逃亡、酒のうえでの乱暴狼藉など、行く先々で問題を起こし、その過程で優れた作品を生み出し続けたのです。38年という短い生涯は光と闇に満ちており、まさに‘事実は小説よりも奇なり’です。

レンブラントの一番弟子

澁川雅俊:  次は、ファブリティウスの《ゴールド・フィンチ》です。彼はレンブラントの弟子のなかで最も才能に恵まれていたとされる画家ですが、火薬工場の爆発によって32歳で夭折、遺された作品は十数点ほど。この小さな作品(33.5×22.8cm)は、和名で「ゴシキヒワ」と呼ばれる愛らしい小鳥が題材となっています。『ゴールドフィンチ〈全4巻〉』〔D・タート/河出書房新社〕は、ひとりの少年の激烈な、しかし短い一生を描いた長編小説で、この小さな名画が物語の重要な小道具となっています。そのあらすじを少し紹介します。

母親と共に訪れたメトロポリタン美術館で、名画の強奪を目的とした爆発が起き、母は爆死。13歳の少年も大怪我を負うが、傍に居た瀕死の古物商が‘その絵’を指さし、「持って逃げろ」と言う。少年はその言葉に従って絵を持ち去るも、以来、その絵は彼の人生を翻弄していくことになる。さまざまな出来事やいわく付きの人物たちと遭遇し、友情や恋、裏切り、ドラッグなども経験した少年は30代の青年となり、やがて、サスペンスフルな人生は思いもよらない形でクライマックスを迎える。その結末はいかに?

最後は、《真珠の耳飾りの少女》を描いたフェルメールです。『フェルメールの憂鬱~大絵画展』〔望月諒子/光文社〕は、表題にフェルメールとありますが、物語はベルギーの片田舎にあった薄汚れた絵(実はブリューゲルの真作)が盗まれ、それを発端とした名画詐欺事件が中心です。とはいえ、フェルメールの作品に絡む‘コンゲーム’も含まれており、また、作中人物に語らせる形で展開されるフェルメール評も一読の価値があります。

該当講座


【アペリティフ・ブックトーク 第42回】
名画は語る~優れた絵画は優れた物語を生む (19:15~20:45)
【アペリティフ・ブックトーク 第42回】 名画は語る~優れた絵画は優れた物語を生む (19:15~20:45)

今回は、歴史に名を刻む“名画”にまつわる書籍をテーマにしたブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、最近多く出版されている“名画もの”にまつわるさまざまな書籍を取り上げ、「名画と書籍」を自在に行き来して語ります。



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