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日本元気塾セミナーJAXA若田光一が語る「リーダーシップ」

グローバル時代に求められるリーダーとは?

更新日 : 2018年08月07日 (火)

前編 宇宙飛行士に求められるTeam Skills

4度の宇宙飛行を果たし、2014年には日本人では初めて、国際宇宙ステーションのコマンダー(船長)を務めた若田光一氏。常に生命の危険と隣り合わせの宇宙空間、閉鎖環境での長期滞在という状況の中、リーダーとして多国籍のクルーをまとめ、地上の管制局との複雑な通信も行いつつ、見事にチームとしてのミッションを達成されました。そんな若田光一氏に、グローバル時代に求められるリーダーシップ、コミュニケーション能力、チームマネジメント能力について語っていただきました。

開催日:2018年1月12日(水)19:00~20:30

ゲストスピーカー:JAXA有人宇宙技術部門ISSプログラムマネージャ/宇宙飛行士 若田光一 
モデレーター:日本元気塾塾長 米倉誠一郎

撮影:御厨 慎一郎

気づきポイント

●宇宙飛行士の第一条件は、何よりも「優れたチームプレーヤー」であること。
●リーダーシップだけでなく、フォロワーシップがあるからこそ、チームの総合力は飛躍的に高まる。
●思いやり。謙虚さ。笑顔。ユーモア。直球勝負のコミュニケーション。それが若田光一流リーダーシップ。


JAXA有人宇宙技術部門ISSプログラムマネージャ/宇宙飛行士 若田光一


ISSコマンダーは「課長」のような存在

地上400kmの宇宙空間を秒速8kmで周回する国際宇宙ステーション(ISS)。世界15カ国が連携するこの国際プロジェクトにおいて、日本人初のISSコマンダー(船長)を務めたのが、宇宙飛行士の若田光一氏だ。

宇宙飛行士といえば、エリート中のエリート。それらをまとめるリーダーとなれば、まさに“雲の上の人”。そんなイメージを持つ人も多いだろう。ところが、若田氏は「ISSのコマンダーは一般企業の『課長』のような立場」なのだと、にこやかに語る。

宇宙開発に携わる巨大な組織の中で、ISSのコマンダーはいわば、最前線の現場を預かる責任者だ。その役割は、様々な国のクルー、各国の管制局のスタッフなどと協働し、時にそれらの間で板挟みとなりながら、対話を通じて上手に調整を図っていくこと。そして、各者のモチベーションや能力を高めつつ、全員のベクトルを揃え、様々なリスクや課題を乗り越え、トップから与えられたミッションを達成していくこと。当然、そこではリーダーシップ、コミュニケーション、マネジメント、問題解決などの能力が必要になる。

「宇宙飛行士やISSのコマンダーも、共通の目的の下で活動する巨大なチーム一員であり、そこで求められる資質は、一般企業の中間管理職とほぼ同じなのです。特殊な仕事ではありますが、本質的な部分には、皆さんの仕事にも通じるヒントがたくさんあると思います」。



日本人最多、4度の宇宙飛行

若田氏は、1996年1月(9日間滞在)に行った初の宇宙飛行を皮切りに、2000年10月(13日間滞在)、2009年3月~7月(137日間、ISSに長期滞在)を経て、2013年11月~2014年5月にはISSに188日間滞在し、後半の約2カ月間、コマンダーを務めた。通算4度の宇宙飛行を経験し、総宇宙滞在時間は日本人最長となる347日8時間33分。

この間、若田氏は10のチームに所属し、様々な国からやって来たクルー達と過ごした。長年、地上でもグローバルチームで活動してきた若田氏だが、「宇宙でのコミュニケーションは毎回、試行錯誤の連続」だという。

宇宙飛行士が暮らすISSは、危険と隣り合わせの極限状況、かつ、24時間閉鎖された空間だ。限られた時間の中で、実験や作業など果たすべきミッションも数多くあり、ストレスやプレッシャーは否応なしに高くなる。6名のクルーは、国籍はもちろん、個性や性格、職業なども実に様々。ISSの活動を支える地上の管制局のスタッフも同様だ。そうした中で約半年間、生活や仕事をすることになるため、「違い」を正しく理解した上での異文化対応、高度なコミュニケーション能力が必要になる。

そのため、宇宙飛行士には高度な技術的・専門的スキルと同程度、あるいはそれ以上にTeam Skills(集団行動能力)が求められる。これは、①自己管理②チームワーク③コミュニケーション④チームへの配慮⑤リーダーシップとフォロワーシップの5つで構成されており、1つでも欠ければ、チームの総合力は低下していくことになる。


宇宙飛行士に求められる5つのスキル


Team Skillsの土台となるのは「自己管理」だ。食事、睡眠、仕事などの時間、感情のコントロールを適切に行い、心身の健康を維持することで、常に高いパフォーマンスが発揮できるようになり、良好な人間関係につながる自発的な行動も生まれるという。

「チームワーク」の構築では、チーム全体で目標を共有すると同時に、違いを正しく認識し肯定的に受け入れることや、建設的な意見を言い合える環境づくりが必要になる。この点がクリアできれば、チームの総合力が高まっていく。

「コミュニケーション」では、正確な意思疎通が重要になる。特に、若田氏は「問い返し(質問)」を徹底的に行ったという。宇宙開発の現場では、小さな疑問や曖昧な認識が、ミスやトラブルにつながりかねないからだ。意思を伝える時は、必ずジェスチャーなどを交えながら問い返し、相手が正しく理解したかどうかを確認する。相手の発言に対しても、「私はこう理解したが、合っていますか?」と質問する。こうしたことを通じて、普段から忌憚なく話し合える環境をつくることで、問題が生じた際もすぐに相談し合い、解決できるようになるのだという。

「チームへの配慮」では、若田氏もクルーのストレス、疲労、病気などに対して敏感になるなど、細かな気配りを心がけ、常に先回りしてサポートを行っていた。また、他のクルーが行う実験にも被験者として協力するなど、仲間の活動を積極的に支援し、信頼関係を築いていったそうだ。

さらに、宇宙では食事も重要なコミュニケーションツールとなる。クルーの労をねぎらうために、せんべいやカレーなど、手持ちの嗜好食(ボーナスフード)をプレゼントする。一緒に食事をとる時間を設け、ジョークを言って笑い合う。食べ物を通してリラックスできる時間を意識的に増やしたことが、チームワークの構築にも大きく役立ったという。

「リーダーシップ」については、常に個人の結果よりもチームとしてのベストの結果を第一に考え、自ら率先して困難に立ち向かい、判断・行動することを心がけていた。また、宇宙ではストレス解消法が限られるため、運動や趣味など個人の時間の確保も重要になる。例えば、地上の管制局からクルーに対して突発的な仕事を求められた時、その目的やスケジュール、クルーの状況などを総合的に考慮し、現場を預かるリーダーとして‘NO’と答えたこともあったそうだ。

「とはいえ、宇宙開発の現場ではリーダーシップと同等、もしくはそれ以上に『フォロワーシップ』が重要視されている」と、若田氏は語る。宇宙では、任務や状況に応じてリーダーとフォロワーが頻繁に入れ替わる。フォロワーの役割は、リーダーの意図を素早く理解し、チームの目標達成のために主体的に行動し、積極的にリーダーを支援すること。フォロワーの力強い支えがあってこそ、リーダーはその仕事を全うでき、チームの総合力も飛躍的に高まっていくのだという。



該当講座


JAXA若田光一が語る「リーダーシップ」
JAXA若田光一が語る「リーダーシップ」

若田光一(JAXA有人宇宙技術部門ISSプログラムマネージャ/宇宙飛行士)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
日本人初の国際宇宙ステーション船長(コマンダー)をつとめた若田光一氏。様々な国のスタッフと協働するためのリーダーシップ、コミュニケーション、チームマネジメントとは?極限の状態でも決断、実行する力とは?宇宙開発の最前線で活動してきた若田氏のご経験をもとに語っていただきます。


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