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日本元気塾セミナー
イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る

LCCピーチの躍進は、「空飛ぶ電車」という新発想から!

更新日 : 2016年11月30日 (水)

【中編】

セミナー風景

 
議論をし尽くし
緻密なコスト・マネジメントを実現する

井上慎一: 実はピーチは日本と香港のジョイントベンチャーカンパニーなので、ガバナンスが西洋式なのです。
取締役会などは極めてトランスフェアレンシー(Transparency[透明性]とFare[料金]をかけた造語)を求められます。筆頭株主の全日空との取引は1円から取締役会決議事項なんです。私が意図的に利益を流してないか確認されます。
様々な意思決定もとても厳しく、「シャンシャン」で終わるものはありません。私なんか「取り締まられ役」(笑)と呼んでいます。また、そこまで議論をつくしているので、その後はあまり間違わないですね。

米倉誠一郎: そんなガバナンスという面を見ても、ピーチの成功は偶然ではないんだと思います。
もう一つ、コスト・マネジメントで気になるのは、5分の1とか、どうしてそんな値段が出せるのかということです。秘訣は、稼働率ですか?

井上慎一: 一日当たり、一機の飛行機をどれだけ飛ばせるかということが大事です。一機当たりの稼働時間を極大化していこうということです。ライアンやサウスウエスト航空などは、一機当たり1日11時間飛ばしています。フルサービス系の航空会社は1日だいたい7、8時間ぐらいでしょうか。

米倉誠一郎: 3分の1を上回る稼働率がすべてを決めていくということですね。そのためには、機種は1機種の方がいいのですか?

井上慎一: そうですね。機種を絞ることで、整備も部品も、要員の訓練も統一でき、コストを抑制できるのです。
一方、稼働率が高くどんどん使うと不具合がでるタイミングも早くなります。そこは、安全運航を第一に考え、全日空との業務提携で対価を払い、定期点検面で支援してもらっています。
 
採用課題にも
独創性をもって対処する

米倉誠一郎: 順調な成長を続けておられますが、パイロットが足りないという問題についてはいかがですか?

井上慎一: 世界的に見て足りていないですね。ピーチでは、外国人パイロットのリクルーティングに力を入れていて、必要人員が確保できている状態になっています。

米倉誠一郎: 採用は台湾、ソウル、香港などですか?パイロット以外の従業員も?

井上慎一: 客室乗務員の募集も韓国、台湾で始めました。その他従業員も多国籍です。

米倉誠一郎: 素晴らしいですね。
もう一つ、採用宣伝費について聞かせて下さい。従業員募集の経費を就航前に入れ忘れたというエピソードをお聞きしましたが・・・?

井上慎一: そうなんです。客室乗務員を募集する時に、採用費を見たら25万円しかなくて、そのなかでやる方法を考えました。採用宣伝費がかけられない。7月だったのでウチワ5000枚を作りまして、社長自らタスキをかけて難波で配ったところ「おもしろい会社」だとテレビカメラに取材されまして。100人募集に4000人の応募があったのです(笑)。以降、こちらがバリューを提供すると、メディアの方は取材してくれてニュースになることを学びました。

米倉誠一郎: どんな人が集まったのでしょうか?

井上慎一: なかなかユニークな方が集まりました。採用面接も、リクルートスーツでなくあなたらしい格好で来てくださいと。アフロで来たり、ど派手な衣装できたり、着物で来たりと…。
 
ピーチの柔軟な発想に限界はない
隅々にまでホスピタリティが行き渡る

米倉誠一郎: ピーチでは、方言のアナウンスがあるとか…。

井上慎一: うちは、とにかく自由や個性を尊重します。私自身が縛られるのが嫌いなので。サービス面もどんどん新たなアイディアを取り入れています。
機内アナウンスも、一度関西弁でやってみたらウケがよくて、だったら全国の方言をやろうかとなりまして。沖縄弁でやったら沖縄のお客さんはすごく喜んでくれたのですが、他の地域の方には分からなくて通訳が必要でした(笑)。

米倉誠一郎: 特色をつくるのはいいですよね。今、新幹線の駅前なんか皆同じで、あれが日本をダメにしていると思います。どこで降りても変わらない。それに比べサンタフェ空港は感動しました。これからも、方言を大事にしていってほしい。
そうしたアイディアは、社員同士のブレーンストーミングから生まれてくるのでしょうか?

井上慎一: 社員の気持ち・発想を大事にしようと思っています。YORIAIという社内アイディア大会を実施しています。
いいアイディアがでたら、社内サイト「大喜利」に乗せています。「いいね」ボタンは「おもろいやんけ」、「ダメだね」ボタンは「あほやんけ」。
近畿大学さんが研究しているナマズを取り入れた「ナマズごはん」もここから生まれました。
機内食のたこ焼き(有料)も定番化してきました。

米倉誠一郎: 話題になった段ボール箱で作ったチェックイン機もそうした場で生まれたのでしょうか?

井上慎一: はい。アイディアを実現するために、大学教授に来てもらい、強度計算もしてもらいました。
実は、その前のチェックイン機もハンドメイドなんです。中古のパソコンと、バーコードリーダーを買ってきて作りました。(笑)

米倉誠一郎: 特注するところが多いですよ(笑)。それにスーパーのレジのようなプリンターをつけて(笑)

井上慎一: 発券を、レシートと間違えて捨てる人もいました(笑)。今は慣れていただいてますが…。


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イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る
〜躍進するLCC!トップから現場まで、ビジョンが浸透する秘訣を聞く〜
イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る 〜躍進するLCC!トップから現場まで、ビジョンが浸透する秘訣を聞く〜

Peach Aviation代表取締役CEOの井上氏と日本元気塾塾長の米倉氏の対談です。
トップから現場の隅々までビジョンを浸透させる井上CEOのマネジメント・スタイルや、現場やお客様からの声を吸い上げ、サービスへと還元する“ピーチ流”の仕組みづくりについて伺います。


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