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撮って、残して、味わって。

写真家・川島小鳥が語る「写真を撮る理由」

更新日 : 2016年04月20日 (水)

第5章 7万分の100、7万分の200


 
谷川俊太郎氏と一緒に本をつくる

古川誠: 台湾といえば、『おやすみ神たち』という本が、2014年10月にナナロク社から出ています。これもすごく素敵な本ですよね。

川島小鳥: 谷川俊太郎さんによる全編書き下ろしの詩と、僕が台湾で撮った写真が100枚ほど入っています。最初に編集者の方から「魂をテーマにした本をつくりたい」と言われ、びっくりしてしまって。谷川さんはどう思っているかなとたずねたら、「小鳥さんの写真には魂があるから、好きな写真を撮ってくれれば、僕は詩が書けます」と言われて。さらに、デザイナーの寄藤文平さんとも一緒に、みんなで息を合わせてつくりました。

古川誠: 台湾に暮らす男の子が出てきますね。

川島小鳥: 田舎に住んでいる10歳ぐらいの男の子です。彼の家に泊まったりしながら撮った写真がメインになっています。

古川誠: 詩も写真も本当に素晴らしくて、さらに「魂」というテーマを聞くと、また違った味わいがあります。谷川さんには1,000枚ほど写真を送ったそうですが、そこから谷川さんが写真を選び、詩をつけてくれたわけですね。

川島小鳥: 谷川さんの詩が素晴らしすぎて。

古川誠: 詩も写真も本当に素敵で、何というか、谷川さんの言葉によって小鳥さんの写真が伸びやかに広がっていく感じがします。逆もまたしかりで、小鳥さんの写真により、谷川さんの言葉がどこまでも広がっていく。息の合った感じが伝わってくる写真集だと思います。ちなみに、台湾に3年通い続けて撮影した枚数は?

川島小鳥: 7万枚ぐらい。

古川誠: 7万枚! その7万枚から『おやすみ神たち』は100枚、『明星』では?

川島小鳥: 200枚。

古川誠:  7万分の200! これは、見る側も心して見なければなりませんね(笑)。
 
フィルムで撮る理由

古川誠: 小鳥さんはデジタルも使われていますが、普段はいつもフィルムで撮影されています。『未来ちゃん』『明星』、そして『オズマガジン』の表紙も、すべてフィルムです。雑誌の世界ではもはやデジタルが大勢を占めていますが、小鳥さんが撮る表紙写真だけは紙焼きにして、印刷所に納品しています。僕も小鳥さんに影響されて、フィルムカメラを持ち歩くようになりました。写真を残すという意味でも、デジタルとは違う味わいがありますよね。

川島小鳥: 写真を始めた頃から、フィルムの色彩や質感が大好きなので。あと、仕事でフィルムを使う理由は、編集者に見せたくないから(笑)。デジタルで撮影を行うと、皆さん「仕事しなきゃ!」と思われているので、写真をのぞき込んでは「もうちょっと、こうして」と言う。それに意味がある時もあれば、そうではない時もあると思います。

古川誠: なるほど(笑)。たしかにデジタルの場合、雑誌なら編集者、広告ならクライアントが横からのぞき込んで、あれこれ言いますよね。フィルムの場合は、基本的に現像するまでわからない。

川島小鳥: デジタルを使う写真家さんの中には、わざわざ液晶画面にガムテープを貼る人もいます。自分にも、今撮ったものが見えてしまうから。やはり、撮ることに集中したほうがいい写真が撮れると思います。

古川誠: なるほど。写真家さんにも色々な方がいますが、小鳥さんに関してはもう、僕は信頼しきっているので、すべてお任せです(笑)。


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撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?
オズマガジン×ナナロク社 presents 撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?

写真集「未来ちゃん」後、待望の最新写真集を発売する川島さんと、オズマガジン編集長が、写真を「残すこと、味わうこと」について語ります。


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