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撮って、残して、味わって。

写真家・川島小鳥が語る「写真を撮る理由」

更新日 : 2016年04月13日 (水)

第4章 撮りたい衝動は「あこがれ」から生まれる


 
台湾のカラフルな魅力を写す

古川誠: 『未来ちゃん』は佐渡島でしたが、『明星』は台湾が舞台ですね。

川島小鳥: 佐渡島で1年間撮り続けたのですが、冬はとても寒い。僕は寒いのが……。

古川誠: もしかして、暖かい場所に行きたかったから台湾へ?

川島小鳥: そうそう(笑)。真面目な話をすると、写真を撮る時は「あこがれ」がすごく大切になります。『未来ちゃん』は、雪に対するあこがれ、子ども時代に対するあこがれがきっかけでした。今度は真逆に振れて、ヤシの木があるような場所にあこがれていたら、台湾で『未来ちゃん』の写真展が行われることになり、訪れてみたら、とてもいい場所だった。

古川誠: なるほど。台湾では何を撮ろうと思っていましたか?

川島小鳥: 誰か1人をじっくり撮り続けることは、『BABY BABY』『未来ちゃん』で実現して「もう悔いはないな」と感じていました。次は色々な人が出てくる写真が撮りたかった。台湾を訪れたら、人も街もカラフルで、誰もが自由に伸びやかに、楽しく生きていた。その姿にあこがれを感じ、丸3年かけて台湾のあちこちを回りながら、写真を撮りました。最後のほうは台湾で3カ月間生活し、語学学校にも通いました。

古川誠: ある日、『オズマガジン』の表紙撮影が終わった後、「3カ月間、台湾に留学します。表紙を撮影する時は、日本に帰って来ます」と突然言われて。最初は冗談だと思いましたが、本当に行ってしまった時はびっくりしました。

川島小鳥: 何度も通い続けるうちに、「さすがに言葉が話せないとダメだな」と気がついて、勉強し始めて、こじらせた。

古川誠: こじらせた(笑)。その結果、たくさんの人達とコミュニケーションがとれるようになり、あのような素敵な写真集ができたわけですね。『明星』というタイトルに決めた理由は?

川島小鳥: 最初は、台湾なので漢字にしたいなと思っていました。ある日、写真を眺めていたら、ケーキの写真の下に“明星”と書いてあるのを見つけ、「すごくいいなあ」と思って。

古川誠: 現地では「アイドル」という意味。ここに登場する人達は、誰もがアイドル?

川島小鳥: それもありますし、ここは楽しい星、明るい星という意味もある。

古川誠: 誰もがこの星のアイドルであり、ここは明るくて楽しい星。実際、『明星』の写真はどれも色彩が豊かでキラキラしていて、小鳥さんの楽しそうな気持ち、優しいまなざしのようなものがストレートに伝わってきます。小鳥さんが台湾にのめり込んだ理由も、よくわかります。

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撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?
オズマガジン×ナナロク社 presents 撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?

写真集「未来ちゃん」後、待望の最新写真集を発売する川島さんと、オズマガジン編集長が、写真を「残すこと、味わうこと」について語ります。


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