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大人のための読書論

~書物語り、ブックトークより~

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2016年02月17日 (水)

第9章 補遺


澁川雅俊: 以上8章までは、2014年9月半ばに「秋の夜長の書物語り」の題名でお話ししたことの要約です。それからおよそ1年半経ちました。その間もこのテーマでたくさんの本が出版されています。以下にその間にライブラリーの書棚に加えられたものを中心に紹介します。


何をいかに読むか、そしてそれをどう活かすか

読書とは何かについて深く追及している本格的な読書論は、この期間には出版されませんでしたが、ブックトークの本篇で挙げていなかった『ヘッセの読書術』の文庫本再刊をまず追加しておきます。この本は1930年代から50年代にかけて書かれた文学書を中心にしたエッセイ集で、訳書の初出当時に再刷されるほど良く読まれました。

 それでも本を読むことが人々の生き方を深める蓋然性を信じて、少なからぬ読書論が2015年中に出されています。まず河合隼雄の『読書人生—深層意識への道』は自伝的読書論ですが、筆者が生涯に読んだ、時には再読した数々の本を自分の人生に投影しています。齋藤孝の『読書のチカラ』であらゆる本があなたの人生を導くと唱えています。また、副題に「人生を面白くする」を付けた企業人出口治明の『本物の教養』、読書家のエッセイスト永江朗の『本を読むということ—自分が変わる読書術』、『超訳ニーチェの言葉』で人気を博した白取春彦の『「深読み」読書術—人生の鉱脈(ヒント)は本の中にある』、などがあります。

 
 最近の読書論はビジネスパーソンの自己啓発に資することを願って書かれたものが目立ちます。ビジネスコンサルタント山口周の『読書を仕事につなげる技術』、ITコンサルタント宮口公寿の『読んだら、きちんと自分の知識にする方法』や三谷宏治『戦略読書』は、職業が人生の要件の一つであるかぎり、同列に掲げていいでしょう。また本来は読書エッセイですが「戦略」をキーワードとしている点で楠木建の『戦略読書日記』もここに挙げておきます。

  
 少し変わったところでは『本を読むときに何が起きているのか』があります。この本は、P・メンデルサンドという装幀家が書いていますが、「ことばとビジュアルの間、目と頭の間」の副題が付けられているように、文字、あるいは文字列とデザインのかかわりを追及しています。その副題は読書と脳との関連を暗示していますが、作家で精神科医でもある樺沢紫苑が『読んだら忘れない読書術』を出しています。

関連書籍

ヘッセ,ヘルマン【著】ミヒェルス,フォルカー【編】 岡田朝雄【訳】
草思社

河合隼雄
岩波書店

人生を面白くする本物の教養

出口治明
幻冬舎

本を読むということ

永江朗
河出書房新社

外資系コンサルが教える読書を仕事につなげる技術

山口周
KADOKAWA

宮口公寿
アスカ・エフ・プロダクツ

戦略読書

三谷宏治
ダイヤモンド社

戦略読書日記 - 本質を抉りだす思考のセンス

楠木 建
プレジデント社

本を読むときに何が起きているのか

ピーター・メンデルサンド
フィルムアート社

読んだら忘れない読書術—精神科医が教える

樺沢紫苑
サンマーク出版

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