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ファッションから始まるコミュニケーション

丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方

更新日 : 2013年08月19日 (月)

第5章 丸山敬太はこの世に1人しかいない

丸山敬太(KEITA MARUYAMA デザイナー)

 
オリジナリティとは何か

丸山敬太: 「オリジナリティ」については、色々な考え方があると思います。誰も見たことがないものをゼロから創り出すことだ、と言う人もいるでしょう。また、音楽の「サンプリング」はオリジナリティには当てはまらない、といった意見もあります。しかし、僕はそうは思っていません。

たとえば、この世に服が生まれてから長い年月が経ち、人間を取り巻く環境も大きく変わっていますが、服を着る人の形状はほとんど変わっていません。けれども、長い歴史の中で人間は、実に多種多様の服を生み出してきました。そのように考えたとき、自分の力だけでまったくのゼロから、誰も見たことがない服を生み出すなど“おこがましい”と、僕は思うのです。

僕が考えるオリジナリティとは、「丸山敬太という人間は、この世に1人しかいない」ということです。

丸山敬太という人間が、日本人として東京に生まれ、さまざまな人と出会い、五感を通して色々なものを感じてきた。丸山敬太から、どのようなものがアウトプットされるのか、何が飛び出してくるのかは、誰にもわからないと思います。僕は、それこそがオリジナリティだと考えています。70億人いれば、70億通りのオリジナルがある。それが、人間のおもしろい部分だと思うのです。

グローバルとパーソナル

丸山敬太: 僕がオリジナリティを認識したのは、1997年に初めてパリ・コレクションに参加したときです。その当時から僕は、ことさら日本的なものを意識して服を創ろうとは考えていませんでした。しかし、初めて行ったパリで、現地の人々から「なぜ、敬太は日本的なものの創り方ができるのか」「なぜ、リリカル(lyrical/叙情詩的)な考え方ができるのか」と言われたのです。

たとえば、当時発表した服の中に、タータンチェックのスカートがありました。僕にとっては“超ブリティッシュ”なものでしたが、現地の人々は、日本人らしさや僕のアイデンティティを感じていた。そのことを指摘され、僕は初めて、自分のオリジナリティを客観的に理解することができました。

グローバルになる、インターナショナルになるということは、よりナショナルになる、よりパーソナルになることだと思います。自分のオリジナリティを知るには、他者の客観的な視点が必要であり、その答えは広い世界に出て、多くの人とコミュニケーションしなければ得ることはできない。パリという街で僕はそう気づかされたのです。