記事・レポート

ファッションから始まるコミュニケーション

丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方

更新日 : 2013年08月15日 (木)

第3章 エゴイスティックな気持ちも込めて服を創る

丸山敬太(KEITA MARUYAMA デザイナー)

 
アイデアが詰まったクローゼット

丸山敬太: 服のデザインを発想する上で、普段はどのようなことをされていますか? ファッションの仕事をしていると、こうした質問を数多く受けます。僕は人生の中で見たこと、感じたこと、食べたもの、コミュニケーションしたもの、旅に出て思ったこと……。アイデアの種となる記憶をたくさん集めることが、発想の基本だと考えています。

たとえるならば、僕のすべてが詰まった大きなクローゼットがある。クローゼットには、無数の引き出しがあり、それぞれに大切な記憶が入っている。おそらく、キーワードを考えているときは、どの引き出しを開けて、何を取り出すのか、その準備をしているのだと思います。

あるキーワードが自分の中でカチッと腑に落ちたとき、いくつかの引き出しが自動的に開き、さまざまな記憶のかけらが飛び出してくる。ときには、自分でも予期しなかったものが飛び出してくる。そこから色々なつながりが生まれ、さらに別の引き出しが開き、だんだんとイメージが形作られていく……。デザインは、こうした流れで進んでいくことが多いように思います。

「気分」が伝わる創りかた

丸山敬太: ファッションデザイナーの仕事というと、デザイン画やスタイル画を描くことが中心である。そうしたイメージを持たれる方も多いと思います。

しかし、僕の場合は「描く」という作業に、それほど多くの時間はかけていません。3日ほど徹夜して、頭の中にあるイメージを描き出すケースが多い。したがって、1年を通して考えると、デザイン画を描いている時間は意外と少ないのです。

僕にとって作業の中心は、そのシーズンの「気分」を考え、世界観を創り上げること。そこに多くの時間を割いています。そして、デザインを考えて、服ができ上がれば、コレクションとして発表する。同時にさまざまの媒体を活用して、思い描いた「気分」と世界観を多くの方々に伝わる形へと再構築し、世界中の人々に届けていく。といった流れになります。

このように、創り手が思い描いた「気分」がきちんと伝わるような創りかたを、僕は大切にしています。身につけていただいたときに、そのシーズンの「気分」が自然と体感できる服にしたい。常にそう願いながら創っています。最初に「会話を大切にしている」と言いましたが、実はとても一方的で、エゴイスティックな気持ちも込めて創っているわけです(笑)。