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自分らしく輝く

白木夏子、安藤美冬 ーー 多様性の先に見えた新しい起業のカタチ

更新日 : 2013年07月12日 (金)

第8章 夢を語ることからすべては始まる

ナナロク社×アカデミーヒルズ コラボレーションイベント 会場の様子

 
言霊は本当にある

安藤美冬: 起業を決断する上で、大切にしていたプロセスはありましたか?

白木夏子: 私は色々な人に自分の夢を語ることから始めました。「叶」という字は十の口と書きます。比喩的な表現ですが、10回口にすれば夢は叶うと思ったのです。自分の夢を人に語ると、後戻りはできなくなります。また、私が最初に描いていたビジネスモデルは、ジュエリーではありませんでした。色々なモデルを考え、それを人に語り、様々なアドバイスをいただく過程で、次第に頭の中が整理され、最終的にジュエリーを選択したのです。

言葉に強い思いを乗せて語ると、協力を申し出てくれる人、キーマンを紹介してくれる人が現れて、つながりが広がっていきます。拙著の中でも桃太郎の話を書きましたが、自分の志を高く掲げていると、自然と支えてくれる手が増えていく。自分の思いに周囲の人たちの思いが加わることで、強い推進力が生まれると思うのです。だから私は「言霊」は本当にあると思っています。

安藤美冬: 私もあちこちで「教育に携わりたい」と発言していたら、最近になって意外な人から大学の講師依頼の話が飛び込んできて、本当に驚きました。おかげさまで、今秋から念願の大学非常勤講師として「SNS社会論」という授業をさせてもらうことになりました。これも、思いきってやりたいことを伝えた言霊の力ですね。

白木夏子: 自分の頭の中で夢を描いているだけでは、人のつながりは生まれませんし、物事も前に進みません。思いを発信し続けることで、言霊を受け取った人がリアクションをくれる。ときには幸運も運んできてくれるのです。

起業は気負わず、背負わず

安藤美冬: 自分の力でビジネスをするとなると、大変な苦労が伴います。夏子さんはとても強い女性だと思いますが、落ち込んだときはどのように対処されているのでしょうか?

白木夏子: 会社を経営するとなると、毎日のように新しい課題に直面し、選択を迫られます。色々なことが同時に進んでいくため、実は落ち込んでいる暇もなく、次に進んでいることが多いのです。とは言っても、やはり落ち込むときもあります。その際は必ず疲れているのだと考えて、とにかくぐっすり寝ます。朝起きると頭の中が整理されていて、生まれ変わったような気持ちになるのです。

心が折れそうなショックな出来事にぶつかることもありますが、私の場合は数週間すると立ち直ってしまうことが多い。だから、深く落ち込むことは少なくなりました。起業後の数年間で色々な経験をしたことで、根拠のない自信が強くなっているのかもしれませんね。

安藤美冬: 私も自分を応援してくれる人が増えてきてからは、あまり落ち込まなくなりました。支えてくれる人を思い出すと、落ち込んでいる暇はないというか、元気が出てきます。

白木夏子: 本当にそうですよね。実は私は、強い社長ではなく、人を引っ張るタイプでもありません。少し前に「最近の社長は“てへぺろ”が多い」という記事を読みましたが、私もまさにそのタイプで、常に周りのスタッフに助けられている、てへぺろ社長です。いまは支えてくれるスタッフがいるからこそ、自分の好きな仕事ができていると感謝しています。

安藤美冬: 起業したからと肩肘を張らないこと、ひとりで多くを背負い込まないことも大切です。私自身は、仕事はしょせん人生というパズルの1ピースでしかないと思っています。もちろん仕事には全力を尽くすけれど、同時に大好きな趣味である旅行や読書も楽しむ気持ちで。といっても、私のような働き方は好きな人と、好きなときに、好きな場所で色々な仕事をする“公私混同”感が強いので、ワークライフバランスならぬ「ワークライフブレンド」。毎日仕事をしているようで、遊んでいるようで、そのあたりの境目がよく分からないですね。

白木夏子: 海外に行くと、スモールビジネスを立ち上げている人が本当に多い。話を聞くと「これまで複数の会社を興して、すべて倒産した」と言う人がたくさんいます。日本人の感覚で聞いていると唖然としてしまいますが、本人は至って平気な顔をしている。起業することに対して変に気負っていない部分が、日本人との大きな違いだと思います。