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自分らしく輝く

白木夏子、安藤美冬 ーー 多様性の先に見えた新しい起業のカタチ

更新日 : 2013年07月03日 (水)

第4章 あなた自身はどう考え、何をしたいのか?

白木夏子(HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)

 
日本人から、ひとりの地球人へ

安藤美冬: 夏子さんのご著書『世界と、いっしょに輝く』を一気に読み終えて、心から尊敬の念が湧き上がってきました。同時に色々な点で共通する部分があり、うれしく感じました。例えば、10代後半から20代前半の時期に海外の大学に留学したことも同じですよね。

白木夏子: 国際協力を目指す上では英語が必須になり、そのためには留学して英語を身につけるしかない。短大で2年間英語を勉強し、ロンドンを目指しましたが、家族は海外や英語にまったく縁がない。私自身も海外は旅行の経験しかない。大きな不安を抱えたまま、初めての海外生活に入りました。

ロンドンで生活を始めてから1週間後、ターニングポイントが訪れました。ロンドンは世界有数のマルチカルチャーの街であり、多様な民族・人種が暮らしています。そこでは「日本ではこうだ」という説明がまったく通用せず、必ず「あなた自身はどう考え、何をしたいのか?」と問い返されてしまう。相手にとっては、私が日本人かどうかなど関係ないのです。

様々な価値観がミックスされた街で生活していくためには、自分を持つしかないと痛感しました。日本という枠組みの中にいた自分が、地球の中の自分、世界の中の自分というように突然ステージが変わったのです。それからは、個人としてどのように生きていくのかを深く考えるようになりました。美冬さんもそうした経験はありましたか?

安藤美冬: 私は慶應義塾大学在学中にオランダのアムステルダム大学に交換派遣留学しました。当時はジャーナリストを目指していたので、人文科学を専攻し、中でもメディアやコミュニケーション論を学びました。オランダを選んだのは『アントニアの食卓』(※編注)という映画を見たことがきっかけです。

その映画に出てきた通り、オランダの社会や文化はまさに多様性そのものでした。特にアムステルダムは国際都市であり、様々な国の人々が往来しています。また、ワークライフバランスの最先端を行く国であり、正社員として週3日勤務しながら学生を続けている人がいるなど、物質的な豊かさよりも、心の豊かさを大切にしている社会だなと感じました。

白木夏子: 多様性という言葉が出てきましたが、それは現在の日本に最も求められているものだと思います。ロンドンでは出る杭は打たれません。主張しない人は置いて行かれてしまうから、常にたくさんの杭が出ているわけです(笑)。日本の文化にも良い部分は数多くありますが、今後は日本でも多様性を許容する文化が求められると思います。そうでなければ、世界から取り残されていってしまうでしょう。特に日本人の働き方にも、美冬さんのように多様性があっていいと思うのです。

※編注 『アントニアの食卓』(原題:Antonia)
1995年製作のオランダ・ベルギー・イギリス合作映画。第68回アカデミー賞外国語映画賞受賞。第二次大戦後のオランダの田園を舞台に、おおらかなヒロインと、周囲のユニークな男女の人間模様を描いた作品。監督・脚本はマルレーン・ゴリス。