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自分らしく輝く

白木夏子、安藤美冬 ーー 多様性の先に見えた新しい起業のカタチ

更新日 : 2013年06月26日 (水)

第1章 美しいジュエリーで世界を輝かせたい

日本初のエシカル(人や社会、環境に配慮した)な素材を使ったジュエリーブランド、HASUNAを立ち上げた若き社会起業家、白木夏子さん。かたや、ソーシャルメディアを駆使した独自のノマドワークスタイルで注目を集める安藤美冬さん。働き方の多様性がクローズアップされる現代において、自分らしく輝くために大きな企業・組織を離れ、それぞれのカタチで起業したお二人に、等身大の起業ストーリーを語っていただきました。

白木夏子(HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)
安藤美冬(株式会社スプリー代表)

白木夏子(HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)
白木夏子(HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)

 
笑顔の裏に、誰かの涙は要らない

白木夏子: HASUNA(ハスナ)という名前は、蓮の花に由来しています。蓮の花は濁った泥の中で育ち、懸命に美しい花を咲かせます。アジアでは浄化の象徴、清らかで美しい力の象徴と言われています。蓮の花のような力を持つジュエリーを通して、世界を浄化していきたい。どのような環境にあっても、力強く清らかに生きようとする人々を応援したい。それがHASUNAに込めた思いです。

私たちが身につけるジュエリーの素材は、多くが発展途上国から輸入されています。これらの国には、利権を巡る紛争、不当な搾取による貧困、児童労働、環境破壊などの問題が横たわっています。ジュエリーは美しい輝きとともに、喜びと笑顔を私たちに提供してくれるもの。しかし、その背景に多くの人々の苦しみや悲しみがあったとしたら、どのように感じられるでしょうか。

身につける人だけでなく、サプライチェーンに携わるすべての人が笑顔になれるジュエリーを提供したい。そのためにHASUNAでは、人や社会、自然環境に配慮し、生産・流通過程が可視化されたエシカルな素材を世界中から選び出しています。

美しさの背景にあるストーリー

白木夏子: HASUNAで扱う素材は、実際に私たちが現地に足を運び、信頼できる仲介者と素材提供者を選定した上で、フェアトレードにより質の高い素材を取り寄せています。

例えば、カリブ海に面する中南米の小国、ベリーズ。その地域の砂浜でしか採れない貝殻や珊瑚を現地の職人が丹念に研磨し、美しい艶を持つジュエリーパーツに仕上げています。ここでは、正当な評価と収入を得られていなかった職人に対して、安定した収入を提供するのと同時に、仕事への誇りを取り戻す機会を提供しています。

アフリカ中部にあるルワンダからは、牛の角を仕入れています。食用牛の廃棄されていた角を、ニスを使わずに丹念に研磨し、自然で柔らかな光を放つ素材に仕上げています。1994年から激しい内戦が続いていたルワンダの街には、紛争孤児やストリートチルドレンがあふれています。読み書きができず、特別な技術を持たない彼らは、成人しても働く機会が得られません。ここでは、元海外青年協力隊の方が立ち上げた工房で、高度な加工技術を学びながら働き、収入を得る機会を提供しています。

金は、コロンビアで採掘されたものを使用しています。世界に数多くある小規模金鉱では、多くの子どもが労働力となっており、世界に流通する金の12%は、児童労働を行う小規模金鉱で採掘されていると言われています。また、金の精製・抽出作業では有害な水銀が使われているケースがあり、人体や環境に悪影響を及ぼしています。HASUNAでは、児童労働の禁止、有毒化学物質の使用不可など、倫理的な労働条件・労働環境を遵守する現地の団体から金を仕入れています。また、こうした団体は社会インフラの整備や、子どもへの教育機会の提供、地域の環境保全などにも貢献しています。