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2012年版 いま、気に掛かる本たち

ライブラリーフェローによる、本にまつわる話

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2013年02月08日 (金)

第4章 日本論・日本人論、再び・三たび(2)

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中央集権的な強い日本の再興

澁川雅俊: また、憂国の烈女、櫻井よしこからは「強い日本を取り戻す強い日本人でなくて、どうすんの!」と叱咤激励が飛んできます。彼女の『甦れ、日本〜論戦2012』〔ダイヤモンド社〕は、それこそ‘沈む’奔流に翻弄されている民主政権と政府にさまざまな檄を飛ばしています。いわく、‘首相は国のために身を捨てよ!’、‘この国本来の価値観を甦らせよ!’、‘近隣諸国の横暴を許すな!’などなどと。

それにこの人が加わります。「合理性よりも人の情、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神」を主張し、ベストセラー『国家の品格』を書いた藤原正彦も『日本人の誇り』〔文藝春秋/2011年〕を出し、「日本人よ、個より公、金より徳、競争より和を重んじ、日本人としての誇りを取り戻し、世界に自立せよ」と鼓舞します。

石原慎太郎もそれらの議論に『新・堕落論〜我欲と天罰』〔新潮社/2011年〕で参加しています。序文で「この数年の間…日本の将来にそこばくともない不安と危惧を感じていない者はなかった。〔3.11〕災害を機にこの国を、芯の芯から改造しなければ」と書き、大災害は平和であることに毒され、「自己犠牲による献身」の美徳が失われ、ただただフワフワと仮初めの安楽を追求してきたことへの天罰だとしています。著者は、閉塞感を脱却する理念を福澤諭吉の「立国は公にあらず。私なり。独立の心なき者、国を思うこと、深切ならず」(『痩我慢の説』の冒頭の一文)を引用し、公助を求めるな、自助を貫徹すべし、と主張していますが、その言説を読み違えています。

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