記事・レポート
「感動する力」でアートはここまで楽しくなる:姜尚中×竹中平蔵
もっと深くアートを感じるために、ちょっと深くアートを考える
政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2012年10月09日
(火)
第5章 アートは神なき時代の宗教かもしれない
姜尚中: 漱石は「則天去私」という言葉を遺しています。これは天に則り私を去るということですから、悟りを開くのではなく、「我を忘れる」ということです。我々は自我からなかなか逃れることができません。しかしアートの中には、そういう世界があります。これは私の考えでは、宗教に近いものです。今日、宗教的な体験に替わり得るものがあるとすれば、アートだと思います。
村上隆さんは、「これだ!」と思った瞬間に、脳がパカッと開いたような感じがしたと言っていました。それは恐らく自己というものが吹っ飛んだ状態で、アートというものは限りなく死に近い状態でつくられるものなのでしょう。「我を忘れる」というのは、かなりそれに近いと思うのです。
現代では、おそらく多くの人が教会に行くことも、神社にお参りに行くこともないと思います。私は、美術館は神なき時代の教会ではないか、アートというのは神なき時代の魂ではないかと思うのです。それは異空間の中で、日常的には味わえないものを、つまり自我について考えさせるものであると同時に、我を忘れる体験をさせてくれるものではないでしょうか。
【本物に触れてほしい】
アートは私たちに「本物」を提供してくれます。あらゆるものが複製化される現代では、最新の科学技術をもってすれば、クローン人間もできるかもしれません。そういう資本主義社会の中に生きている私たちは、どこかでオーセンティックなものを、商品化されないものを、交換価値に還元されないものを、絶対的に交換不可能なものを求めているのです。それは限りなく神に近いものです。神なき時代に、アートを通じて限りなく宗教体験に近い体験ができるというのは、重要なことだと思います。
ヨーロッパやアメリカの美術館に行くと感じるのは、子どもたちが多いことです。残念ながら日本では、なかなか子どもを目にしません。現代のような複製時代でも、オーセンティックなものがこの世の中にはあるということを、どんなに紛いものができたとしても、それでは満たされないものがあるということを、子どものころから触れて知っておくことは大切です。
村上隆さんは、「これだ!」と思った瞬間に、脳がパカッと開いたような感じがしたと言っていました。それは恐らく自己というものが吹っ飛んだ状態で、アートというものは限りなく死に近い状態でつくられるものなのでしょう。「我を忘れる」というのは、かなりそれに近いと思うのです。
現代では、おそらく多くの人が教会に行くことも、神社にお参りに行くこともないと思います。私は、美術館は神なき時代の教会ではないか、アートというのは神なき時代の魂ではないかと思うのです。それは異空間の中で、日常的には味わえないものを、つまり自我について考えさせるものであると同時に、我を忘れる体験をさせてくれるものではないでしょうか。
【本物に触れてほしい】
アートは私たちに「本物」を提供してくれます。あらゆるものが複製化される現代では、最新の科学技術をもってすれば、クローン人間もできるかもしれません。そういう資本主義社会の中に生きている私たちは、どこかでオーセンティックなものを、商品化されないものを、交換価値に還元されないものを、絶対的に交換不可能なものを求めているのです。それは限りなく神に近いものです。神なき時代に、アートを通じて限りなく宗教体験に近い体験ができるというのは、重要なことだと思います。
ヨーロッパやアメリカの美術館に行くと感じるのは、子どもたちが多いことです。残念ながら日本では、なかなか子どもを目にしません。現代のような複製時代でも、オーセンティックなものがこの世の中にはあるということを、どんなに紛いものができたとしても、それでは満たされないものがあるということを、子どものころから触れて知っておくことは大切です。
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第7章 アートと社会の関係
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第9章 人に間(ま)を加えて「人間」とする日本人の美意識とは?
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該当講座
姜尚中氏×竹中平蔵氏
芸術は我々に勇気や感動、新たな発想を与えてくれ、豊かで潤いのある時間を我々は過ごしています。しかし、そこにはアートを感じる力、どのようにその作品、モノに接するかという我々の姿勢が重要になってきます。今回のセミナーでは、姜尚中氏に経験をもとに、アートを感じる力についてお話いただきます。また、後半の竹中平蔵氏との対談では、アートが社会に与える影響そして社会で担う役割・可能性についても発展させます。
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