記事・レポート

スティーブ・ジョブズを通して学ぶ「感性訴求」

~iPod mini仕掛人、前刀禎明はいかにして世の中を動かしたのか~

経営戦略ビジネススキルキャリア・人
更新日 : 2012年08月30日 (木)

第4章 感性訴求vs.機能訴求

前刀禎明(株式会社リアルディア代表取締役社長/モーションビート株式会社取締役会長)

前刀禎明: Momentum、Demand、Desireというプロセスは、何かを動かしていくときや、人にものを伝えるときにすごく重要になります。人に何かを伝えるときには、まずは「共感」を得ることです。共感を得たら、聞いた人に自分のこととして「想像」してもらうこと。想像してもらった後は「自発」的に行動してもらうこと。「共感」「想像」「自発」という3つのプロセスを、私はいつも大切にしています。

機能ではなく、感性に訴えるデザインや使う楽しさ、買う前に色を選ぶプロセスをもエンターテイメントにした結果、iPod miniは音楽の楽しみ方を変えることができたのです。

「感性訴求vs.機能訴求」のおもしろい例があります。iPodに対抗してソニーは「今度のウォークマンは有機ELディスプレイ搭載」というメッセージで新ウォークマンを出してきました。でもユーザーにしてみれば、別に有機ELでも液晶でも曲がわかればいいのであって、新製品の価値があまりわからなかったんです。しかも事もあろうか、製品発表会でハワード・ストリンガーをはじめとするトップ3人のうち2人が、ウォークマンを逆さまに持ってしまったんです(笑)。iPodをやっつける戦略商品なのに、トップが逆さまに持つなんて、絶対やっちゃいけないことです。

重要なのは性能やスペックではなく、聴衆の心に訴えるメッセージです。昔のソニーは非常にいいメッセージを出していました。猿がウォークマンを聴いている映像に「音が進化した、人はどうですか? 新世代ウォークマン誕生」、これだけです。機能をごちゃごちゃ言ったり、ましてや技術を押しつけるようなことは一切言っていませんでした。

人に対するアプローチには「論理的なアプローチ」と「感性的なアプローチ」があります。 これから重要になってくるのは、目に見えない部分、エモーショナルな働きかけです。相手に何かを想像してもらえるような働きかけがないと、なかなかものは伝わりません。

Clip to Evernote

関連書籍

『僕は、だれの真似もしない』

『僕は、だれの真似もしない』

前刀禎明
アスコム


該当講座

新たな価値を生むセルフ・イノベーション

~スティーブ・ジョブズ氏を通して学ぶ感性訴求~

新たな価値を生むセルフ・イノベーション
前刀禎明 (株式会社リアルディア 代表取締役社長)

前刀禎明 (㈱リアルディア 代表取締役社長/ngi group㈱代表執行役会長 兼 取締役)
「企業が本質的な次元で価値を創り、人の心を動かす」にはどうしたらよいのか、そのために必要な「感性訴求」とは何か?Apple日本法人代表取締役として、ジョブズ氏と共に日本のAppleブランドを復活させたご経験を踏まえてお話し頂きます。


経営戦略 ビジネススキル キャリア・人