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「世界の都市総合ランキング 2011」で4位だった東京の将来性は?

~東京の磁力を回復し、優秀な人材や企業を惹きつけろ~

東京政治・経済・国際経営戦略
更新日 : 2012年04月09日 (月)

第4章 東京の実力と将来性~水道技術と天然ガス発電所~

猪瀬直樹氏

——ここで会場の参加者にアンケートを実施したところ、「2011年の東京の総合ランキングは4位」という結果について、「高すぎると思う」が66名、「低すぎる」が18名、「妥当」が104名でした。また「来年(2012年)の東京のランキングはどうなると思いますか」と聞いたところ、「4位より上がると思う」が8名、「4位から下がる」が120名、「同じ」が44名でした。

猪瀬直樹: 僕は「現在の東京の評価は低すぎる」、「来年は下がる」を選びました。「現在の東京の評価は低すぎる」と考える理由の1つは、東京の水道技術の高さです。東京都水道局の漏水率はわずか3%。世界の大都市では10%、20%が当たり前なので、東京の水道技術は世界一なんです。

水道は人間の血液と一緒で、心臓のポンプの圧力が強すぎるとパンクして、弱いと貧血になります。例えばサッカー日本代表の試合があると、みんなテレビにくぎ付けになりますよね。試合中は誰もトイレにいかないので、圧力を落とさないと管が破裂します。でもハーフタイムになるとみんな慌ててトイレに行くので、一気に圧力をかけないといけないんです。こうした動きをコンピュータで管理して、微妙に調整しています。

コンピュータだけでなく、人間の技も優れています。例えば音聴棒というゴルフクラブみたいな棒を路面に当てて水の流れる音を耳で聞くことで、漏水している箇所を突き止めることができます。いちいち地面を掘り返さなくてもわかるので、無駄な経費が掛かりません。しかも東京の水は、ペットボトルで売られている海外の水よりおいしい。

この世界一の水道技術を官民で連携し、パッケージとして海外に輸出する。これは東京にしかできないことです。我々はこういう資源を持っていて、その資源を有効に活用しているわけですから、これについてはもう少し誇りを持っていいと思います。

それからもう1つ。東京都は、東京湾に100万kwの天然ガス発電所をつくるというプロジェクトを立ち上げました。これまで東京は、福島第一原発から約900万kw、新潟の柏崎刈羽原発から約800万kwを送電してもらっていましたが、震災後、これが崩れました。電力危機を回避するためには、遠隔地からの送電に頼らない分散型の「地産地消」のエネルギー構造をつくり上げなければいけないんです。今回の震災のためだけではありません。東京は今後、大きな直下型地震に見舞われる可能性があるので、それぞれのエリアできちんと生きていけるような地産地消のエネルギー態勢をつくり上げる必要があるのです。

ここ六本木ヒルズは自前の発電所を持っていて、最大約38,000kwを発電しています。東京湾で100万kw発電したり、六本木ヒルズのように自力で電力を確保する。これが地産地消エネルギーの究極の形になると思います。東京電力に依存している状態をこうして少しずつ変えていくことで、東京という都市は、新しく生まれ変わる可能性があるのです。

福島原発の問題があったので、多分来年(2012年)は東京の評価は少し下がると思いますが、今後評価が上がっていくようにしたいし、上がるだろうと思っています。

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該当講座

東京の磁力を回復する

~「世界の都市総合力ランキングGPCI-2011」からみた東京の未来展望~

東京の磁力を回復する
猪瀬直樹 (東京都副知事・作家)
GLEN S. FUKUSHIMA (エアバス・ジャパン株式会社 取締役会長 元在日米国商工会議所会頭 )
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
市川宏雄 (明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 )

猪瀬 直樹(東京都副知事)グレン・S・フクシマ(エアバス・ジャパン㈱取締役会長)竹中平蔵(慶應義塾大学教授)市川 宏雄(明治大学専門職大学院長)
東京」の磁力を回復させ世界から人々を呼び込むために、何が課題で、何をすべきかを明確にすることは、日本全体の未来を考えるうえで、必須命題ではないでしょうか。『都市総合力ランキング』という客観的データを基に、多面的な視点からの意見を交わし、日本そしてグローバル・シティ「東京」が緊急に解決すべき課題を明らかにします。


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