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「世界の都市総合ランキング 2011」で4位だった東京の将来性は?

~東京の磁力を回復し、優秀な人材や企業を惹きつけろ~

東京政治・経済・国際経営戦略
更新日 : 2012年04月05日 (木)

第2章 東京は経営者からの評価が低い

市川宏雄氏

市川宏雄: 総合ランキングのトップ4都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京)は、「経済」「研究・開発」「文化・交流」「交通・アクセス」の4分野において、いずれも10位以内に入っていますが、「居住」や「環境」の2分野では必ずしも上位に入っているわけではありません。しかし東京は6分野全てで6位以内に入っています。つまり、東京はオールラウンド型の都市であるにもかかわらず、総合ランキングでは4位どまりなのです。なぜそうなるのか、具体的にデータを見ていきましょう。

「経営者」「研究者」「アーティスト」「観光客」「生活者」のグループ別に見ると、トップ4都市は大体上位にランクしています。しかし東京は「経営者」からの評価が8位と相対的に低くなっています。まず1つ、ここに東京の弱点があることがわかります。

トップ4都市の偏差値を見ると、ニューヨークは偏差値70以上の指標が17個、ロンドンは15個、パリは17個あります。しかし東京は13個しかありません。これも東京が抱える課題です。つまり東京はほかの3都市と比べると、抜きん出た強みがないために、毎年4位に留まっているということです。

次は指標別に東京の強みと弱みを見てみましょう。強みとしては「ISO 14001取得企業数」は世界トップです。これを強みと言うのはちょっと恥ずかしい気もしますが、東京の企業はこれが好きで、多くの会社が取得しています。あとは「GDP」や「世界のトップ300企業」も多く、ほかには「小売店舗の充実度」「特許登録件数」「公共交通の充実・正確さ」などがあります。

一方、弱みとしては「GDP成長率」が下がっていること、「コンテンツ輸出額」「ハイクラスホテルの客室数」「外国人の数」が少ないこと。また「都心部の緑地状況」や「都心から国際空港までのアクセス時間」が長いこと、「タクシー運賃」の高さも弱みになっています。そして最大の弱点は「法人税率」と「平均物価水準」が高いことです。この2つは偏差値40以下という、極めて低い結果が出ています。

日本の法人税率は41%弱です。実はアメリカも日本と同じくらい高いのですが、結果的に経済力があるからいいのです。アジアの都市はどうかというと、香港が16.5%、シンガポールと台湾が17%、韓国が24.2%、中国が25%です。東京は急成長しているこれらのアジアの都市と競争しなければいけないのに、法人税率が高いためにグローバル企業から敬遠されている状態です。

この改善策はあるのかというと、あるんです。都心から国際空港までのアクセス時間を30分ぐらいにして、経済自由度と法人税率と外国人数を改善すれば、最終的には東京がトップに躍り出ることが、データから見て取れます。

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東京の磁力を回復する

~「世界の都市総合力ランキングGPCI-2011」からみた東京の未来展望~

東京の磁力を回復する
猪瀬直樹 (東京都副知事・作家)
GLEN S. FUKUSHIMA (エアバス・ジャパン株式会社 取締役会長 元在日米国商工会議所会頭 )
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
市川宏雄 (明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 )

猪瀬 直樹(東京都副知事)グレン・S・フクシマ(エアバス・ジャパン㈱取締役会長)竹中平蔵(慶應義塾大学教授)市川 宏雄(明治大学専門職大学院長)
東京」の磁力を回復させ世界から人々を呼び込むために、何が課題で、何をすべきかを明確にすることは、日本全体の未来を考えるうえで、必須命題ではないでしょうか。『都市総合力ランキング』という客観的データを基に、多面的な視点からの意見を交わし、日本そしてグローバル・シティ「東京」が緊急に解決すべき課題を明らかにします。


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