記事・レポート

伊勢谷友介とリバースプロジェクト その理念と実践に迫る

人類が地球に生き残るために、どうするべきか?

環境
更新日 : 2012年03月27日 (火)

第4章 デッドストック商品をデザインの力で蘇らせる

片岡真実(左)伊勢谷友介氏(右)

伊勢谷友介: 衣食住の衣《HATCH YOU(ハッチ・ユー)》からは、デニムメーカーのリー・ジャパンさんとコラボレーションした「LeeBIRTH PROJECT(リーバース・プロジェクト)」を紹介しますね。

大量生産、大量消費には必ず無駄なものがたくさん出るんです。新しいのが出て型落ちになったものとか、ちょっとほつれていたりするB級・C級品とか。こういうものは全然問題なく着られるのにデッドストックになっちゃうんですよ、何万本も。どこのメーカーでも絶対にある話なのに、こういうことは大きな声では言わないので、僕らは罪のないメーカーから買っていると思っちゃうわけです。

そもそも素材のコットンは、すごく問題のある作物なんです。最近、オーガニックコットンが推し進められていますけど、その理由をご存じですか? 今、大企業が数百円の激安Tシャツを売っていますけれど、これは異常な事態です。だってその数百円で、その企業や綿花農園の人たちは生活しているわけですから。農家はちょっとでも生産量が減ったら生きていけないので、大量の農薬を撒いて生産量を安定させています。でもそれを繰り返していると土地が死ぬので、あるとき突然つくれなくなるそうです。すると新しい所を開墾するんです。つまり農薬を使ったコットン栽培は、死んだ土地を継続的につくり続けるということです。

しかも農園で働いている人は、農薬を大量に使うにもかかわらず防護対策をしていないので、皮膚病やガンなどの病気になったり、中には亡くなる人もいるそうです。フェアトレードも成立していないから、子供も母親もそういう環境で働いています。僕ら先進国の人間は、彼らが死なないギリギリの金額しか与えないことによって、プランテーションを成立させきたんです。このことに気づいた人たちが、オーガニックコットンを推し進めているんです。

オーガニックコットンにはいろいろ規定があるんですけれど、基本は3年間農薬を使っていない土地で栽培した綿花でないと認められません。移行期間中はオーガニックと認定されない上に、農薬を撒かないから収穫量も減るので、農家は収入が減ることを恐れます。だからこの移行期間のコットンを「プレオーガニックコットン」として、農家の収入を補填する価格で買い取って、それで商品をつくって先進国で売るってことに僕らはトライしています。僕らだけでなく、意識の高い大企業さんもやっていて、Leeさんも一所懸命やっています。

そういう“Lee”さんと”REBIRTH PROJECT”が一緒になってはじめたのが「LeeBIRTH PROJECT」。ダジャレですね(笑)。デッドストックに僕らがデザインを施すことで新たな価値を加え、再びちゃんとした製品として蘇らせるんです。今年(2011年)2期目が終わって、来年はさらにパワーアップしてやることになると思います。

片岡真実:  Leeのジーンズを売っているところに行けば、買えるんですか?

伊勢谷友介: Lee SHOPで売っています。ただ、今のところ数はそれほど出ていません。デザインでカバーできる範囲が結構難しいので。でもLeeさんいわく、デッドストックはたくさんあるそうですから、頑張ります。

Clip to Evernote

関連リンク

  六本木アートカレッジ「人類が地球に生き残るために、どうするべきか?」

俳優、映画監督、美術家の伊勢谷友介氏は、「人類が地球に生き残るために何かできるのか」をテーマに、 主宰する「REBIRTH PROJECT」でさまざまなプロジェクトを展開してきました。特に、3.11東日本大震災以 降は精力的に活動を広げています。それは未来にとってどんな可能性を持っているのか、私たちは日常的 にどんな心構えが必要なのか?森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実氏との対談で、アートもビジネス も社会問題も一体となって考える、広い視点から見た未来について語ります。