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加藤嘉一と竹中平蔵が、日本と中国のこれからを激論

中国で最も有名な日本人が語る、中から見た中国と外から見た日本

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2012年03月15日 (木)

第6章 中国改革のトリガーは? 2020年と連邦制に注目

竹中平蔵氏(左)加藤嘉一氏(右)

竹中平蔵: 中国は10年ぐらい前から「経済体制と政治体制の矛盾があるから、いつか爆発するぞ」と言われながらも、成長に支えられてこれまでやってきました。今マグマがだいぶたまっているという状況は理解できるのですが、まだまだ成長が続くので、不安を抱えながらも今までと同じように発展していくのではないかという見方もあります。これについてはどう思いますか。

加藤嘉一: 私も3年ぐらい前までは「まだまだ中国共産党はもつだろうな。10年間くらいは成長がすべてを覆い隠す状況が続くだろうな」と思っていたんです。でも昨年から今年にかけて(2010~2011年)、高速鉄道をはじめとする様々な問題が起きて、不安要素やリスクが急速に高まったと感じているので、正直なところ予測できません。共産党政権が本当に民衆のパワーを恐れるようになりましたから。

竹中平蔵: 「この改革を上手くやれば、中国はリニュードチャイナになる」という改革のトリガーは、一体どこにあると加藤さんはお考えですか。国有企業の改革なのか、税制の改革なのか、それとも中央集権体制、つまりは連邦制の導入なのか。大きな方向性として我々はどこに注目していけばいいのか、サジェストいただけますか。

加藤嘉一: 私の見る限り、少なくとも首脳部はポリシーミックスにトリガーを求めるしかないと考えているようです。中国は雇用の機会もですが、民間企業からの税収がいまや50%、中には70%以上と言う人もいるんです。民間が汗を流して経済の繁栄に貢献しているわけです。こうした民間企業が公平な競争がなされないために報われない現状は、絶対変えなければならないことです。あとは金融改革、人民元の自由化ではないでしょうか。

私は「2020年」が1つのキーワードだと思います。中国は上海を国際金融センターにするのも、有人宇宙ステーションの建設も2020年だと言っています。上海を国際金融センターにするというのは中国的な言い方あって、これは「人民元を自由化する」ということです。2020年にポイントを合わせて、国有企業改革も、社会保障の充実も、金融改革も、うまくミックスさせてソフトランディングさせると思います。

社会にいろいろな矛盾があるので「これがトリガーだ」という唯一のものはないと思うのですが、竹中先生は何がトリガーになるとお考えですか。

竹中平蔵: 中国は今、自由が与えられて、だんだん社会が不安定になっていますが、完全に自由になれば社会は安定するんです。その間の移行期が一番難しいわけです。強い中央集権のシステムと、分散型のシステムは非常に安定する、でもその間は非常に難しい。だから自由にしながら分散型のシステムにもっていくために、連邦制に近いものを採用できるかどうかに私は一番注目しています。

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加藤嘉一 (英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニスト/北京大学研究員/慶應義塾大学SFC研究所上席所員/香港フェニックステレビコメンテーター)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

加藤 嘉一(コラムニスト)
竹中 平蔵(慶應義塾大学教授/アカデミーヒルズ理事長)
政治・経済から一般の中国人の生活まで、あらゆる角度から日本と中国のこれからについて、会場の皆さまにもご参加いただきながら議論します。


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