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橘・フクシマ・咲江氏が語る、グローバル人財獲得競争・最前線

~ヘッドハンター第一人者に聞く、世界で必要とされる人財~

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2011年11月22日 (火)

第6章 グローバル・リーダーになるには

橘・フクシマ・咲江氏

橘・フクシマ・咲江: どうすればグローバル・リーダーに必要な資質を身に付けられるのでしょうか。育成という点から考えると「組織・企業」「社会・教育機関」「個人・家庭」それぞれでできることがあります。

「組織・企業」では、研修を短期・中期・長期ですることが必要です。「社会・教育機関」では、語学の習得と多様な学生との共生経験を得るために、子どものときから海外の人と一緒に生活をしたほうがいいと私は思っています。ベネッセが教材を提供している上海の全寮制の幼稚園を見学したときに驚いたのですが、トイレに全世界から集めた20種類の蛇口があったのです。小さい頃から「世界はこんなに多様なんだよ」ということを教えているわけです。

驚いたのはそれだけではありません。3歳の子どもが菓子を持ってきてくれたのですが、その子は食べずに立っているので「どうして食べないの?」と聞いたら、「私はホストですから食べません」と言うのです。3歳の子どもがですよ。そこでは3歳の子どもが自分でシャワーを浴びて、洋服をたたんで木箱にしまっていました。とても自立していたのです。

一方、日本ではモンスター・ペアレンツが大学にまで現れています。「先生の教え方が悪いから、うちの子どもが卒業できなかった」と大学に言いに来た親がいるそうです。これでは将来の競争力にかなり差が出るのではないかと私は心配しています。

では「個人」ができることは何かというと、コミュニケーション能力や自立・自律した考え方、失敗に対する耐性を育成することです。具体的に何をすればそうした力を付けることができるのか、一つひとつ見ていきましょう。

まず「戦略性」を育てるためには、プロフェッショナルとしてコアになるスキルを身に付け、全体を見る仕組みを学ぶ必要があります。それにはMBAの概念が大変役に立ちます。なぜなら、仮説検証のトレーニングとビジネスの仕組みを概念的に勉強できるからです。これらは世界共通です。例えばクライアントと候補者の話の中に「マーケティング」と出てくれば、それが何を意味しているかわかるのです。今はオンラインや本で独学もできますし、日本でプログラムを提供しているところもたくさんあります。学位を取得する必要はないと思いますが、学ぶことは大切です。

それから「多様性への対応能力」を養うには、やはり留学などで異なる価値観を持つ人たちと一緒に生活したり、仕事したりすることで「こういう考え方の人もいるんだな」と慣れることです。

「起業家精神」を身に付けるには、「自分が社長だったらどうするか」ということを常にシミュレーションして考えることです。入社1日目からそう考えて行動するのです。そのためには会社の仕組みやビジネスの内容と流れ、その中での自分の仕事の位置づけを意識することです。これを意識しながら仕事をするのとしないのとでは、3カ月で大きな違いが出てきます。

私がコーン・フェリーに入ったばかりのとき、問題を抱えて上司のところに行くと「君ならどうする?」と聞かれました。「高い給料を払って問題解決のために雇っているんだから聞くなよ」ということですね(笑)。ですので、自分で3つぐらい解決策を考えて上司に持って行くようにしました。この経験は大変役に立ちました。取締役になったとき、それまで「自分がCEOだったらどうするか」というシミュレーションを一所懸命してきたので、どうすべきかがある程度予測できました。どういうポジションであっても「自分が社長だったら、上司だったらどうするか」とシミュレーションすることをお勧めします。

「創造的問題解決能力」もシミュレーションと同じように、想定外のことを想定することで育ちます。「もし何か起こったら」ということを常に考え、何か起こったときはできない理由を考えるより、できる理由を考えるのです。実はこれは、私が自分自身に言い聞かせていることでもあります。

日本支社で雇われ社長をしていると、本社から日本の状況を無視した指示がくることがあります。そんなとき「そんなことは日本じゃできない」と最初は思います。できない理由もちゃんとあるのですが、「その方法はできないけれど、ほかの方法で同じ結果を導けないか」と考えます。例えば「コストカットするために人員を減らせ」という指示であれば、「人を辞めさせるのは日本では難しい。でもコストカットが目的なら、こういう方法があるのではないか」と考えるのです。そうすることで、どんな危機もチャンスに変えることができます。

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