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グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野晃一郎氏が語る「真のグローバル企業」とは?

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2011年10月20日 (木)

第3章 ソニー・スピリットを忘れるな

辻野晃一郎氏

辻野晃一郎: 次に、私の実体験を通じて、ソニーは一体どんな会社だったのかということを少し述べさせていただきます。

日本が太平洋戦争で負けた後、井深大さんと盛田昭夫さんが東京通信工業という会社を興しました。それが後のソニーになるわけです。ソニーは日本人が生んで、一代でグローバル企業になった会社です。今の若い学生さんは、ソニーの創業者が井深さんと盛田さんだということを、もはや知らないんですよ。私はそれに衝撃を受けて『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』という本を書いたのです。日本人のロールモデルになり得る偉大な起業家たちの精神は、誰かが語り継いでいかなければいけない——そんな思いが、本を書いた動機の1つにありました。

井深さんは東京通信工業を興したとき「設立趣意書」というものを書いています。ソニーのサイトで公開されていますが、それを読むと、今のクラウドの時代にも十分通用するようなコンセプトでつくられた会社であることがわかります。実はGoogleに行ったとき、ソニーとGoogleのスピリットに共通するものを感じました。Googleについては、後でお話しします。

設立趣意書で一番有名な言葉は「自由闊達にして愉快なる理想工場」というものです。「自由闊達」というのはフラットなコミュニケーションを尊ぶということで、ソニーでは新入社員だろうが社長だろうが、名前を呼ぶとき肩書を絶対につけないんです。最近のソニーはわかりませんが、私がいた頃はみんな「さんづけ」でした。後輩を呼び捨てや「君づけ」にすると、呼んだ瞬間に上下関係がはっきりしますよね。これはやってみるとわかるのですが、「さんづけ」にすると言葉が丁寧になるので相手をリスペクトしながら、しかも対等なコミュニケーションが自然ととれるようになります。

それからソニーには、技術や技術者を非常に大事にするカルチャーがありました。なぜかというと、世の中を変えていくのはイノベーションで、イノベーションを起こすのは感度の高い技術者やデザイナーだからです。そういう人たちが中心になって新しい技術を生み出して、それをもとに新しい交通手段や通信手段が生まれてどんどん世の中が変わっていくのです。

井深さんがしたためた「設立趣意書」は、今、我々が起業するときにも、とても参考になるものだと思います。

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関連書籍

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野晃一郎
新潮社


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パラダイム・シフトを生きる ~真のグローバル企業とは~

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辻野晃一郎 (アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)

辻野 晃一郎(アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
ソニーとグーグルという時代を象徴する2つの企業において、「アナログからデジタルへ」、「ウォークマンからiPodへ」、「マイクロソフトからグーグルへ」という多くのパラダイムシフトが起きた時代の変化の渦中を駆け抜けてきた辻野氏に、真のグローバル企業にとって必要なことは何かを伺います。


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