記事・レポート

創成のイノベーション「未来に継承するリベラル・アーツ」

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

BIZセミナー
更新日 : 2011年07月04日 (月)

第4章 自分のことは自分が一番よく知っている?

佐治晴夫氏

佐治晴夫: 月周回衛星「かぐや」が2008年に撮影した、月面から地球が昇る「満地球の出」という映像があります(※会場で上映)。きれいな地球を見られるのは、地球から外に出たからです。

私たちは生まれてから死ぬまで、自分の顔を見ることができません。「鏡で見ている」とおっしゃるかもしれませんが、鏡に映る顔は右と左が反対です。じゃあ、もう1枚鏡を入れて左右を元に戻せばいいかというと、それも違うんです。「自分の顔ってどうなのかな?」と鏡を覗くときの顔と、普段の顔は違うからです。私たちは、自分のことは自分が一番わかっていると思っているのですが、本当にそうでしょうか。

昨夜寝る前に、「明日も同じ自分であるだろうか?」と心配になった方はいらっしゃいますか?「明日も自分は佐治晴夫かな。目が覚めたら、ササキハルオになっていたらどうしよう」と。大抵の方はそうは思わないで寝たと思うのですが、それはどうしてでしょうか。

私たちの体は60兆個の細胞でできています。そのうちの1%は、寝ている間に入れ替わっているんです。ということは、モノとしての私、モノとしてあなたは変わっているわけです。それなのに、どうして私は私、あなたはあなたでいられるのでしょう?

考え方はいくつかあると思いますが、自分を自分にしているのは、自分でそうなっているわけではなくて、自分と周りとの関係性において私になっていると考えるのが、一番妥当だと思います。「自分だ」「自分だ」と言っても、自分の顔は見えません。けれど、私の周りにいろいろな人がいたり、いろいろな物があったりすることの中において“佐治晴夫”というものがいるということです。

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該当講座

第9回 創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ
佐治晴夫 (鈴鹿短期大学学長)

佐治 晴夫(鈴鹿短期大学学長)
「私たちはどこから来てどこに行くのか」という根本的な問題とともに、リベラルアーツ(教養や芸術)が我々にもたらす影響そして重要性についてお話いただきます。


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