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ブックオフの危機を救った社会貢献プロジェクト

Room to Readとの協業「BOOKS TO THE PEOPLE」

ライブラリーイベント
更新日 : 2011年05月12日 (木)

第3章 急成長から急転直下、会社の自分探しが始まった

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佐藤弘志: ブックオフは1990年の創業以来、個性の強いカリスマ創業者に率いられて、一気に伸びていきました。私が入社した1997年は、まさに伸び盛りの時期で、社内は高揚感に包まれていました。それが3年前の2007年に不祥事が出て、創業者が引責退任しました。会社の経常利益の推移では、2004年に上場し、まさに右肩上がりで伸びていたときです。マスコミには「急成長のひずみ」「甘えを生んだ家族主義」と書かれました。

当時、私は子会社にいたので組織的な売上不正に関わっていないということで、お家の一大事に「お前、(社長を)やれ」ということになり、人生暗転、という感じでした。代表取締役社長に就任して半年後の11月には大減益の下方修正を行い、「会社をどうするんだ?」「テロリストか」と言われました。

みんな無我夢中で何が何だかわからんという状態から、その後ジリジリと伸ばしてきたとはいえ、まだピーク時には届いていません。創業20年を目前にカリスマ創業者を失い、茫然自失。「会社って何のためにあるんだろう?」という原点を再発見しなければいけないというところに我々は立たされていたのです。

ブックオフの企業理念には、「個人が成長するから会社が成長する、会社が成長するから個人が成長する場所ができていく」というのがあります。ちょっとハードルの高い“無理め”の課題がどんどん個人に降ってくるからこそ、人はそのギャップを埋めるために成長するんだ、個人と企業の成長スパイラルをグルグル回すんだ、ということが会社の基本にあります。

といっても5年後、10年後も世の中が必要とする企業であり続けなければ企業は成長できないわけです。では「持続可能な成長条件」は何かといえば、お客さまの生活に必要不可欠なことで、かつ、他社にまねのできないことをやること。そうすれば持続的に成長していける、というのが原点にありました。

20年前の創業時には、新しいビジネスモデルとしてもてはやされ、実際勢いよくよく伸びていましたが、現在は、当たり前の存在です。どんなブランドでもやがて当たり前の物になって飽きられていってしまうのと同じです。それに若者も減ってきているし、本を読む人もどんどん減っていて、新刊書店さんが中古本販売を始めたり、新刊の定価販売が崩れたり、ネット配信、電子書籍など、今は逆風だらけです。このままだと当然のように壁にぶつかるという状況に立たされていたのです。

「若者が減っていく」と言いましたが、ブックオフのお客さまは20歳を中心とする男性がメインです。けれど本屋ですので、いろんな年齢層の方にいらしていただいてもおかしくない場所だと思っています。若い方に支持されて成り立っているブックオフですが、もっといろいろな年代のお客さまに使っていただくことができないものだろうかと考えていました。

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