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料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio

~創立者が見つけた「食を学ぶ」本当の楽しさとは~

BIZセミナーマーケティング・PR経営戦略キャリア・人
更新日 : 2011年04月04日 (月)

第4章 kidsから婚活まで——挑戦は続く

志村なるみ氏

志村なるみ: 続いての特徴は「トレンドを取り入れた独自のメニュー」が学べること。料理はもちろん、パンやケーキも初心者から学べるカリキュラムを用意しています。

通常、パンを焼くとなると半日程度の作業が必要ですが、これでは普及は難しい。そこで、その常識を覆した「2時間で、手ごねで焼き上げるパン」をコンセプトに開発をスタートしました。ケーキについては「フランス菓子を自宅のキッチンで」というコンセプトです。当時はおしゃれなケーキ屋さんがまだ少なく、日本の女性がフランス菓子を短時間で、ありものの材料で作れたら素晴らしいだろうと考えました。そして見事にパンのコースが大ヒットして、今では料理コースと同程度の約16万人が受講しています。

顧客の声をメニューに反映することにも力を入れています。約3,500人いる全国の講師からメニューのアイデアを募集し、試作して、商品化しているのです。商品化されれば、日々「今日の家庭料理のAメニューは累計で5,000人受講、Bメニューは15,000人受講」というようにデータ化されます。生徒さんとは本当に正直なもので、人気メニューとそうでないメニューとでは、受講数が桁違いです。開発スタッフも自身の評価にかかわりますので、毎日、数字を見ながら必死にメニュー検討を繰り返しています。

次に事業領域についてお話します。2005年11月に「abc kids」1号店をスタートさせました。これは4歳から12歳までの子どもを対象とした食のスクールです。子どもたちに、素材の本当の味、自然な甘み、苦味、塩味、辛味、酸味を知ってほしい、食材を隅々まで味わってほしいという思いで取り組んでいます。

新しい試みとしては、2007年に男性も通える料理教室「ABC Cooking Studio+m」をスタート。男性を料理教室に入れることについては社内でも反対がありましたが、とりあえず数カ所くらいならばと作ってみました。しかし、ガラス張りのスタジオが恥ずかしかったのか、受講料が高かったのか、最初は集客できませんでした。

ところが後に、婚活ブームに背中を押された男性からの問い合わせが急増し、現在では数百人の男性が参加しています。カップルでの受講も可能で、女性の参加者からは「料理を2人で作ることで、相手がよくわかる」という声が聞こえてきます。「お皿を洗ってくれるかどうか」「この人は気が利く/利かない」ということが、約2時間で手に取るようにわかるそうです(笑)。

ほかにも、CSR活動として「離乳食レッスン」を開催したり、国連の難民支援機関であるUNCHRの協賛活動を行ったりしています。これらは大事に続けていきたいと思っています。

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該当講座

料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio

~創業者が見つけた「食を学ぶ」本当の楽しさとは~

料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio
志村なるみ (株式会社ABC Holdings 取締役/株式会社ABC Cooking Studio 創立者)
田中洋 (中央大学大学院ビジネススクール 教授 )

志村 なるみ(㈱ABC Holdings 取締役)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
成熟市場において新たな価値を提案することでブランディングの成功を果たした企業からゲスト講師をお迎えする2回シリーズ。第1回目の本講座では、ポップなカラーに全面ガラス張りのスタジオに象徴されるABC Cooking Stduio の創立者、志村なるみ氏をお招きします。既にある市場の中で新たな女性向けのビジネスを拡大してきたプロセスについて伺うことで、成熟した市場においてブランドを構築する思考法について学びます。


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