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ロボットは人間になれるのか? ~ロボット、人間らしさの追求~

読みたい本が見つかる「カフェブレイク・ブックトーク」

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2011年03月03日 (木)

第5章 人間らしさの追求

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: 『コミュニケーションするロボットは創れるか—記号創発システムへの構成論的アプローチ』(谷口忠大著、10年NTT出版)という、つい最近出された本があります。これなどは単にメカニカルな技術の問題だけではなく、ことばとか表情とか感情などという人間らしさにかかわる技術的な問題についても考察されています。先に挙げた爆笑問題がかかわった本の中にも、「人間の機能をロボットに置き換えて、置き換えて、それでも最後に残るものが、人間の本質である」という趣旨のコメントがあります。ここに提起されていることを人間らしさと言い換えることができるでしょうが、いずれにせよそれはどういうことでしょうか。

『ロボットは涙を流すか—映画と現実の狭間』(石黒浩・池谷瑠絵著、10年PHPサイエンス・ワールド新書)では、たとえば『スター・トレック』『マトリックス』『ターミネーター』『スター・ウォーズ』などに出てくるSFロボットと、現実のロボット工学の技術を対比させ、感情の赴くままに自然に涙を流すことができるロボットが近いうちに製作されるだろうと言っています。

またもう一人ここに、ロボット製作の目的を人間理解、とりわけ人間の知的展開の仕組みを解き明かすことにおいているロボットエンジニアがいて、最近本を出しました。それは『ロボットという思想—脳と知能の謎に挑む』(浅田稔著、10年日本放送出版協会)という本です。これはロボットを人工物としてつくり、動かしてみるだけでなく、その目的を人間の知のダイナミックスを理解することに焦点を絞って書かれています。『ロボットのおへそ』(稲邑哲也・瀬名秀明・池谷瑠絵著、09年丸善ライブラリー)では、情報工学の専門家と作家と科学ジャーナリストたちがロボットはどこまで人間になれるのかを気軽に論じています。

また『人間らしさとはなにか?—人間のユニークさを明かす科学の最前線』(マイケル・S・ガザニガ著、柴田裕之訳、10年インターシフト)は、世界のロボトニックがいま立ち向かっている問題を脳神経科学の観点から追求しています。600頁にも及ぶ大著ですが、その分野の素養をまったく持たない私たちが読んでもわかりやすく書かれています。この本の中で著者は、「スマート・ロボットはジョニー・デップになれるか?」という一節を立てて人間らしいロボットの可能性について述べています。

こうした本を通じて、人間らしさの追求が今後のロボットエンジニアリングの課題であることはわかるのですが、同時にロボティックたちの楽観的でナイーブな考えにも気づかされます。先に指摘した『生きている人形』の巻頭詩の比喩を思い起こさざるをえません。

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