記事・レポート
ロボットは人間になれるのか? ~ロボット、人間らしさの追求~
読みたい本が見つかる「カフェブレイク・ブックトーク」
カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2011年03月01日
(火)
第3章 人形とロボット
澁川雅俊: ロボットは、漫画のキャラクターにとどまらず、どうしても人形とのかかわりへと連想が繋がっていきます。
ツイッターで呟かれているものの中で最も多いのがフィギュア・ロボットです。本では『ROBOT魂:SIDE BOOK』(10年アスキー・メディアワークス) があります。これは漫画機動戦士ガンダムのフィギュア・カタログです。ガンダムだけでなく、鉄腕アトムや鉄人28号はもとより、他にもたくさんの漫画ロボットがあるわけですが、それらのフィギュアを網羅した本はいまのところないようです。
ただしフィギュアを「人形」と読み替えると、いろいろと出てきます。『人形記—日本人の遠い夢』(佐々木幹郎著、大西成明写真、09年淡交社)は人型ロボットの源流ともいえるからくり人形を含むさまざまな日本の人形とその作家たち、あるいは人形遣いなどについての話です。同種のもので『図説 からくり人形の世界』(千田靖子著、05年法政大学出版局)は、日本全国に伝わるからくり人形を総ざらいしていますし、『見て楽しむ江戸のテクノロジー』(鈴木一義監修、06年数研出版)にもからくり人形、操り人形、浄瑠璃人形などのことが書かれています。
〈からくり〉あるいは〈しかけ〉を現代ロボット工学の源流だと言い切っていいかどうかわかりませんが、それらが私たちと同じように振る舞うことができる人形への憧れを実現したプロトタイプのエンジニアリングであったことは事実で、洋の東西を問わず発達していたようです。
『生きている人形』(ゲイビー・ウッド著、関口篤訳、04年青土社)はこんなことを問題にしています。一般に人々は科学が夢を叶える万能の方法と思いがちで、それによって天地を創造したといわれる神の役割を演じることができるのではないかという欲望を増長させた。とりわけ西欧では、その欲望が生きている美女と見紛うまでに精巧な機械仕掛けの人形を作り出してきた。そうした機械仕掛けの人形製作技術を追い、この本は、生命と非生命の境界はどこにあるのか、どこまでが人形で、どこからが人間なのかを考察し、究極的には「人間とは何か」という根源的な問いかけをしています。とりわけ巻頭に掲げられた作者不詳の詩は、生身の人間と人形の違いだけでなく、自然と科学技術とのかかわりを考えさせる秀逸な作品です。少々長いのでここには引用できませんが、その詩篇だけでもご一読されるようお薦めします。
なおロボットを、「人ではないが人に似せて創り出されたモノで、人になんらかの恩恵(負の恩恵もある)を及ぼすモノ」などと素朴な捉え方をすると、人形のすべてはもとより、神話の神々、あるいは埴輪、あるいは陰陽道の式神、末には妖怪にまで連想が及んでしまいます。それはそれで大変面白いのですが、ブックトークとしては果てしないことになりそうなので、ここでは堪えておきましょう。
ツイッターで呟かれているものの中で最も多いのがフィギュア・ロボットです。本では『ROBOT魂:SIDE BOOK』(10年アスキー・メディアワークス) があります。これは漫画機動戦士ガンダムのフィギュア・カタログです。ガンダムだけでなく、鉄腕アトムや鉄人28号はもとより、他にもたくさんの漫画ロボットがあるわけですが、それらのフィギュアを網羅した本はいまのところないようです。
ただしフィギュアを「人形」と読み替えると、いろいろと出てきます。『人形記—日本人の遠い夢』(佐々木幹郎著、大西成明写真、09年淡交社)は人型ロボットの源流ともいえるからくり人形を含むさまざまな日本の人形とその作家たち、あるいは人形遣いなどについての話です。同種のもので『図説 からくり人形の世界』(千田靖子著、05年法政大学出版局)は、日本全国に伝わるからくり人形を総ざらいしていますし、『見て楽しむ江戸のテクノロジー』(鈴木一義監修、06年数研出版)にもからくり人形、操り人形、浄瑠璃人形などのことが書かれています。
〈からくり〉あるいは〈しかけ〉を現代ロボット工学の源流だと言い切っていいかどうかわかりませんが、それらが私たちと同じように振る舞うことができる人形への憧れを実現したプロトタイプのエンジニアリングであったことは事実で、洋の東西を問わず発達していたようです。
『生きている人形』(ゲイビー・ウッド著、関口篤訳、04年青土社)はこんなことを問題にしています。一般に人々は科学が夢を叶える万能の方法と思いがちで、それによって天地を創造したといわれる神の役割を演じることができるのではないかという欲望を増長させた。とりわけ西欧では、その欲望が生きている美女と見紛うまでに精巧な機械仕掛けの人形を作り出してきた。そうした機械仕掛けの人形製作技術を追い、この本は、生命と非生命の境界はどこにあるのか、どこまでが人形で、どこからが人間なのかを考察し、究極的には「人間とは何か」という根源的な問いかけをしています。とりわけ巻頭に掲げられた作者不詳の詩は、生身の人間と人形の違いだけでなく、自然と科学技術とのかかわりを考えさせる秀逸な作品です。少々長いのでここには引用できませんが、その詩篇だけでもご一読されるようお薦めします。
なおロボットを、「人ではないが人に似せて創り出されたモノで、人になんらかの恩恵(負の恩恵もある)を及ぼすモノ」などと素朴な捉え方をすると、人形のすべてはもとより、神話の神々、あるいは埴輪、あるいは陰陽道の式神、末には妖怪にまで連想が及んでしまいます。それはそれで大変面白いのですが、ブックトークとしては果てしないことになりそうなので、ここでは堪えておきましょう。
ロボットは人間になれるのか? ~ロボット、人間らしさの追求~ インデックス
-
第1章 はじめに—「ロボット」、その名の起こり
2011年02月25日 (金)
-
第2章 鉄腕アトムより前にあった漫画ロボット
2011年02月28日 (月)
-
第3章 人形とロボット
2011年03月01日 (火)
-
第4章 夢を実現するロボット・テクノロジー
2011年03月02日 (水)
-
第5章 人間らしさの追求
2011年03月03日 (木)
-
第6章 未来ロボット
2011年03月04日 (金)
-
第7章 フィクショナル・ロボット
2011年03月07日 (月)
-
第8章 おわりに——個性のない人間、個性を備えたロボット
2011年03月08日 (火)
注目の記事
-
03月26日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一による、六本木ヒルズライブラリーのための選書書棚「動的書房」。2024年3月に新たに21冊が並びまし....
-
03月26日 (火) 更新
本には、人生を変え、時代を創るパワーがある!
2023年4月から2024年2月まで全6回で開催したシリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」。モデレーターの干場弓子さんと何度も企画会....
シリーズ編集者の視点〜時代を共に創る〜 <編集後記>
-
03月26日 (火) 更新
【重要】「アカデミーヒルズ」閉館のお知らせ
「アカデミーヒルズ」は、2024年6月30日をもって閉館させていただくこととなりました。これまでのご利用ありがとうございました。閉館までの間....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 04月09日 (火) 12:00~12:45 / 04月09日 (火) 19:00~19:45
ゆる~くつながろう!メンバー雑談
テーマなし!年齢制限なし!ライブラリーメンバーなら誰でも参加できる雑談イベントです。肩の力を抜いて楽しく、そしてリラックスした45分を過ごし....
-
開催日 : 04月19日 (金) 19:00~20:30
地図・絵画・日記が語る
江戸時代は厳格な身分制社会の一方で、身分や職業を超えた文化交流の場が形成され、技術と文化の発展を促しました。その中で「浮世絵」は情報メディア....
江戸の「街づくり」「モノづくり」の遺伝子
-
開催日 : 05月02日 (木) 見学ツアー11:00〜12:00/オルガン・プレコンサート13:40~/コンサート14:00〜16:00頃
【メンバー対象イベント】日本フィル&サントリーホール
平日2時のクラシックコンサート「にじクラ~トークと笑顔と、音楽と」のリハーサルを体験しませんか?俳優・高橋克典さんがナビゲーターとなり、上質....
「にじクラ」リハーサル見学・ロビーツアー&昼公演鑑賞